有給消化率90%の労働環境が保育士の笑顔とゆとりを生む

 小田急ムック成城園では、0~2歳をそれぞれ約10人ずつ受け入れている。園内は可動式の壁などで必要に応じて広く使ったりすることもできるが、年齢ごとに部屋が用意され、必要に応じて異年齢保育を行う。

 園庭の代わりに少し広めのベランダがあり、そこにちょっとした遊具や遊べるスペースがある。また、ベランダからは線路を行き来する小田急線の電車を見下ろすことができ、子ども達のお気に入りの場所の一つであるようだ。同ビル内には屋上庭園もあり、花や植物に接することもできる。また、晴れた日は近隣の公園に足を運んでいる。

ベランダからは小田急線の線路が見下ろせ、行き交う電車を眺めるのも楽しい
ベランダからは小田急線の線路が見下ろせ、行き交う電車を眺めるのも楽しい

 認証保育所だが、スタッフの数はゆとりを持ち、各年齢クラスに正社員の保育士2~3人とアシスタントスタッフを配置。給食も園内で調理。

 特に子どもを通わせる保護者から評判がいいのは、先生の温かさだという。

 「保育士が笑顔になれば、子どもも自然と笑顔になりますよね。そして、保育士がいつも笑顔でいるには、やっぱりスタッフの数や仕事にゆとりがあることとコミュニケーションが円滑であることが大切だと思います。成城園の先生はみんな仲が良くて、常に子どもについてのその日の発見や違いを共有しています」と、園長の前田日野さん。

 子どものけがや事故につながりそうな危険なことを“ヒヤリハット”と呼んで、教育現場ではスタッフ間で共有して事故防止につなげることが多いが、この園では同じく大切にしていることに“ニヤリハット”があるという。

 それは、聞いたり話したりしていてニヤリと笑ってしまうような子ども達の行動や変化、ハッと気づかされる子ども達の反応や気づきのこと。そんな日々の楽しい“ニヤリハット”を先生同士で共有することで、自分のクラス以外の子どもの成長についても把握し、一緒にその成長を喜び合うことにつながっている。

 しかも、系列園合わせると100人を超える正社員の保育士達の有給休暇消化率は約90%。残業もほぼ無い。残業や持ち帰り仕事の多い保育業界では、珍しいほど好条件な労働環境だそう。そういったことも、保育士達が子どもと関わるときの精神的ゆとりに大いに関連していることがうかがえる。

お昼寝の後の午後の時間、子ども達はゆったりと遊ぶ
お昼寝の後の午後の時間、子ども達はゆったりと遊ぶ