B 昇格の1年遅れってそんなに気になりますか? 60歳まで働くと思ったら、1~2年くらいいいやとは思えないですか?

A 自分も含め、社内の人間は視野が狭くなっているとは思います。 社内での競争しか見えていない。昇格の基準が明確だからこそ、モチベーションが下がる面もありますね。基準が一律で、時間制約がある人のパフォーマンスに対してどう評価してくれるかというものは無いので。

D 転職経験が無いと「そんなの、いいじゃん」とは思えないんですよね。新卒で会社に入って、隣の人に勝った、負けたしか見えない。私も転職して初めて「あの競争は何だったんだろう」と思います。

B 私は2社目を辞めた後、1~2年はつらかったんですね。一切やりがいを求めず、働きやすさだけで選んだ3社目の職場では、周りも腰掛けで緩く働いている人ばかり。そこにいる自分をなかなか肯定できなかった。でも3年勤めたことで、そういうところできちんとやることの美学とか意義も見いだしました。バリバリやるだけがよしじゃないと

――自著『「育休世代」のジレンマ』でも、子どもを産んだ後に「社内競争がばかばかしく思えた」と感じるようになる事例が出てきます。転職やライフイベントが無いと、うまく価値観の相対化ができる機会が無いのかもしれません。多くの男性は価値観の相対化をする必要も無く、そうして社内競争にまい進できる人が上がっていく仕組みになるわけですが。今回の参加者の発言からは、画一的な価値観に疑問を感じながらも、うまく相対化しきれない苦しさを感じました。

子どもを産んだら管理職になれない

中野 ある意味、日本企業のうまくできているところだとは思うのですが、会社に染まっていると、そこの価値観からなかなか抜け出せないですよね。でも子どもを産むことなんかを考えれば、その価値観に合わせ続けられるのかも不安を覚える。子どもを産んだらどうなりそう、という予測はありますか?

C 育休を長く取れば取るほど、前線には戻れないですね。バンバン出張を入れるのもできなくなるので、子どもが中学生や高校生くらいにならないと、管理職にはなれないでしょうね。

A 私がいる金融機関では、子持ち総合職は支店にはほとんどいなくて、お客さんの都合に左右されない本部に集中して在籍しています。上の世代ではそのまま昇格を諦めちゃっている人もいますね。そうすると会社としてももったいないし、一般職の仕事をしながら総合職の給与をもらっていることになって、フェアじゃない。時間制約があってもそれなりの責任を持たせてもらえる方法がないと、女性同士のあつれきも生むと思います。

D 私が勤めるコンサルティング業界で10年後にマネジャー、パートナーと上がっていきながら、育児と両立できるかは結構厳しいと思っています。実力主義とはいっても、子育てしている人としていない人がいたときにまったく同じアウトプットだったら、長時間働けてコミットメントの高い男性を引き上げると思うんですよ。そういうことを考えていくと、 10年後に今の会社にいる感覚は無いですね。