中野 私が本でインタビューした人の中には、子どもを産んだ後に働く意欲を「冷却」させた人もいましたが、皆さんの話を聞いていると、子どもを産む前から「競争」から降りたそうな印象も受けます。どんなときにモチベーションが冷却されますか?

D 私の場合、制度や前例の都合上、想定より昇進が半年ほど遅れたことなどがモチベーション低下につながりました。でもそれもあって、今は何カ月、何年先に昇格したかではなくて、自分の得意分野や発揮できる価値を生かしていけばいいという発想に切り替わりました。

バリバリ頑張っているロールモデルに引いてしまう

C 私の職場は、子育てをしながら働く制度は整っていてバリバリ働いている人もいるのですが、その人達が強烈過ぎて、「そこまで心を強くして働けるかな」と思ってしまいます。いろんなことを犠牲にしているお母さん達を見て「そこまでして組織に尽くせるかな?」と。組織としては頑張っているお母さんをフィーチャーするじゃないですか。それで闘志が湧く人もいるかもしれませんが、「やっぱり無理かも」と思ってしまう人も多いのでは。

A 頑張っている人を人事部が前面に押し出すというのはうちの会社も同じです。今30代半ばの世代は、入社時が不況期だったので人数が少ないんですね。それで取り上げられるのは1990年代後半入社で頑張っているお母さん達なんです。多いのは、両親サポートあり、子ども一人の典型的なスーパーウーマン。産休・育休、全部含めて1年遅れにとどめ、休みを取っていない同期に追い付いていった人達です。そういうロールモデルしかいないと、人事部が開くセミナーでは「正直引きました」「そこまで頑張れない」という感想ばかりになる。子育てにしっかり重心を置いているモデルが欲しいです。といって自分達が先陣を切って頑張るほど会社への忠誠心を持てないのですが……。

――企業側は「女性のロールモデルがいない」問題を解決しようと、仕事と子育てを両立するバリバリ世代を出してきます。その人達からしてみれば、その時々で目の前のことにがむしゃらに取り組んできただけのことかもしれなくても、後から振り返って語られると、すごく壮絶に見える側面もあると思います。育休世代の女性達もやってみればできるのかもしれませんが、あらかじめ「こういうふうにやるしかない」と見せられると引いてしまう――。