法律上は任意参加でありながら、全員参加が暗黙の了解になっていることも多いPTA。「子どもが小学校に入学した日からPTA会員になった僕は、なんか変だぞと感じたり、いやいやなかなかPTAっていいとこあるじゃんなどと思ったりしつつ、2007年からはいわゆる本部役員まで経験してしまった。その中で、感じ、調べ、議論してきたことを一冊の本にまとめた」。こう話す『PTA再活用論―悩ましき現実を超えて』(中公新書ラクレ)著者の作家・川端裕人さんが、各地のPTA活動や組織活動をリポートします。

今回の舞台は沖縄県。完全に任意制PTAを取り入れ、活動内容を公開している「那覇市立識名(しきな)小学校PTA」。自らを「最初は改革の抵抗勢力だった」と語る、大湾清彦校長のインタビューをお届けします。
(※ 取材は2015年3月に実施しました。肩書は取材当時のものです。)

「PTAがあるからこそ、地域の安全や教育力は守られる」と思っていた

識名小学校の大湾清彦校長
識名小学校の大湾清彦校長

川端 私はPTAの問題には10年くらい首を突っ込んでおります。自分の子どもが小学生になってからPTA活動に関わり、「これは大変なことが起きている」と感じ、自分なりに実態を調査しつつ発言してきました。

 つくづく思うんですが、PTAってそれぞれの事情があって、かなり多様性があります。ただ、どんなに平和なところでも、運営上の悩みはあるようで、PTAに関わるほとんどの人が「何とかしたい」「何とかならないか」という課題を、根本的なレベルで抱えています。

 そんな中で、ほぼ強制になってしまう“自動加入の問題”は、割と普遍的です。「では、なんとか変えてみよう!」と努力する人が出てくるわけですが、結局うまくいかないことが多いです。その場合、よくある理由の一つが「校長先生の賛成を取り付けられなかった」というものです。

 さて、大湾清彦校長は、最初はいわゆる「抵抗勢力」だったものの、次第に識名小学校PTA会長の福里浩明さんの考えに共感するようになったと聞いています。PTAに関して校長が、対外的に積極的に発言してくれるのは希なので、今回は貴重なインタビューになると思います。まず、識名小学校について簡単にご紹介いただけますか?

大湾校長(以下、敬称略) はい、那覇市立識名小学校は創立54年です。近くには歓楽街もなく、教育環境としては恵まれています。地域の方々も協力的で、2つの自治会を中心に地域のつながりが強いのです。児童数750人、世帯数は540。那覇市には36校の小学校がありますが、規模の大きさでは8番目です。1クラスは30人、高学年では40人近いクラスもあります。

『PTA再活用論―悩ましき現実を超えて』著者の川端裕人さん
『PTA再活用論―悩ましき現実を超えて』著者の川端裕人さん

―― 大湾校長が校長として赴任されたのは4年前とのことです。現在、識名小学校では、PTAの任意加入が徹底されていて、その点においては、画期的に「まともな運営」がされています。しかし校長の就任時にはそうではなかったわけですね。

大湾 ええ、当時は、いわゆる普通の体制でした。PTAの活動としては、学級ごとに学級委員長がいて、その他、専門部が文化教養部、保健体育部、環境整備部、健全育成部、総務部があり、そして会長1名、副会長4名という体制でした。PTAが雇っている事務員もいて、学校事務の人達と一緒に働いてもらっていました。

―― それが沖縄のPTAでよくある形なのでしょうか。

大湾 そうです。

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