「いきいきと働く大人の姿」が憧れを生む

 私は民間の進学塾にいたため、明確に「教育サービスの提供者」であり、消費者である保護者に選んでもらい、満足してもらわねばならなかった。ただし、その感覚で学校運営をしないように気を付けている。説明責任を果たす、児童や保護者の気もちを思いやって応対することは意識しているが、要求をすべて受け入れることは難しい。消費者意識を、公教育に向けられると困る現状がある。敷津小は、小さい学校ゆえに「一緒に子どもを育てる」感覚で学校に関わってくれる保護者が多く、助けられている。

土曜日に、長居陸上競技場で小中学校の大会があった。希望者による参加なので「保護者の引率」が基本だが、そうなるとチャレンジできない児童もいる。担任や体育主任が快く出勤してくれた。有り難いが申し訳ない、葛藤がある
土曜日に、長居陸上競技場で小中学校の大会があった。希望者による参加なので「保護者の引率」が基本だが、そうなるとチャレンジできない児童もいる。担任や体育主任が快く出勤してくれた。有り難いが申し訳ない、葛藤がある

 公教育の使命は、安全で安心な学校を作ること。子どもの自尊感情を育てること。集団生活の中で社会性を育てること。いい授業をすること。子どもの学力が定着するよう、家庭学習の指導や協力依頼をすること。たくさんある。いい授業や指導は、精神的に追い詰められて時間の無い教師にはできない。職員室で相談を受け、早く帰ってもらう支援をし、休みやすい体制を作ることも管理職の仕事だ。

 教職員がそれぞれに育児や介護の事情を抱える。特に、今年度は出産ラッシュだ。たった17名だから、助け合わなければやっていけない。休みづらい雰囲気、仕事を抱え込んでしまうプレッシャー、学校現場が積み重ねてきた古い根性論が幅を利かせてはならない。その願いをこめて「教職員のワーク・ライフ・バランス」を目指すことを公言した。

 教職員のためでもあるが、これこそ「子ども達のため」だ。学校の教職員は、小学生がほぼ毎日接する「働く大人」だ。笑顔で仕事をし、職員室でも笑い声が聞こえ、いきいきと授業や業務をする姿に、子どもは憧れを抱く。だからこそ、教職員には心身共に健康でいてもらいたい。

 ある教師から、こんな言葉を聞いた。

「しんどくても、『子どもがこんなに変わりました、ありがとうございます』と保護者に言われたら、もっとがんばろうと思える。『うちでもやってみます』『子どもと一緒にがんばります』という前向きな言葉も、とっても嬉しい」

 「感謝」と「前向き」。

 私自身も、自分の子育てに関わってくれる保育園や学校に伝えよう。前向きな言葉は、連鎖する。笑顔はお互いの表情を明るくする。敷津小にも前向きな言葉があふれるように、まずは校長の私自身から。よく寝て、元気で、明日も笑顔で!