加入率が2割でも、何の問題も無い

―― PTAに参加している保護者は94人。100人を切っていますよね。全校で児童が700人以上いることを考えると、衝撃的に少ない、と感じる人もいるみたいです。福里さんはこの数字をどう受け止めていらっしゃるのでしょう?

福里 衝撃的でした! 正直言うと、私の予想はだいたい50人程度でした。なので、94人は私の予想の倍の入会者です(笑)。入会率は16.3%。約2割です。

―― 「皆さん、PTAに入ってくださ~い」と若干積極的に声がけすれば、もっと集まると思うのですが。お話からすると、超積極アピールはしていないようなので……。

福里 超積極アピールはしてませんね(笑)。平成26(2014)年度5月に入会届けを、すべての保護者と教職員に対して配布した後は、勧誘活動は全く行っていません。識名小学校PTAは、保護者と教師が、子ども達や家庭、学校および社会の様々な事柄について考え、自由な意見交換を通して「学び」や「気づき」を得ることで、会員各々が成長できるような会となることを目指しています。

 そのための活動が、月1回の「ミーティング」です。極端な話をすれば、保護者と教師の1対1でも「ミーティング」は成立するのです。識名小学校では「絵本の読み聞かせボランティア」や「ベルマーク集め隊」もやりたい人だけで、自由にやっています。大事なのは参加している人の「やりたい」「参加したい」という自発的な気持ちです。人数は問題ではない。会員数が保護者全体の1割だろうと2割だろうと構いません。やりたい人だけが集まっていると考えただけで、いい気分じゃないですか。

―― ここは強調してもしきれない部分です。「PTA加入の人数は問題ではない」、と! これを読んで、ふにゃっと脱力して「それでいいんだ」と思ってくれる人が全国に増えてほしいです。

福里 会員数の多い、少ない、を問題にしているPTAは「子どものため」がいつの間にか「活動をするため」になっているかもしれませんね。「子どものため」の活動には人数は関係ないと思います。私は「子どものため」と言う言葉は使いたくありません。敢えて言う必要もないことです。場合によっては「子どものため」は、保護者を思考停止に陥らせる呪文にもなるかもしれません(笑)。

―― ここも大事なポイントですね。「全員加入が望ましい」だとか、少しでも多い加入を追い求めると、「組織存続のための活動」になりかねない、と。「子どものため」という言葉が、異論を唱えられない雰囲気を作りだして、保護者を思考停止に陥らせる現場を、僕は何度も見てきました。

 さて、今後の流れとしては「ミーティング」がしばらく続くわけですね。

福里 そうですね。4月には新入生の保護者向けに、活動紹介と入会申込書を配布して、新規会員を募集します。活動は今年も「ミーティング」のみとします。「ミーティングは保護者と教師の自由な意見交換ができる場所」として定着させたいと思います。私の次男が次年度は5年生。次男が卒業するまでの2年間で、その流れを作って行きたいと思っています。でも2年なんて、あっという間に過ぎるので、最近は徐々にプレッシャーも感じてきました(笑)。

―― ちょっと気になったんですが、新しいPTAの募集をうっかり見落として、気が付いたら現在、PTA会員ではなくなっているという人がいる可能性もありますよね。

福里 ありますね。保護者の中にはPTA自体がなくなっていると思っている人もいます。私も行きつけの床屋さんから、「識名小の保護者のお客さんが、“PTAが無くなってよかった~”って言ってましたが、福里さん会長でしょ? どうなってるんですか?」と言われました。しかも、そういうお客さんが2人もいたそうです(笑)。

 PTA改革についての文書や、入会申し込み書は全世帯に配布しているのですが、興味の無い保護者は目を通さないでしょうね。あえて「PTA≠保護者」として、ことあるごとに言って、学校にもPTAと書いてあるものを保護者に直してもらっていたので、「PTAが無くなった」と思われても仕方ないですね。地下組織!(笑)