小学校の過ごし方は「どの言語で大学に通うか」で変わってくる

牧瀬 私の娘達は、英国に住み、現地の学校に通っているので、生活環境はほぼ100%英語環境です。そんな中で、日本語を話す、聞く、読む、書く能力すべてを完璧に、ということは現時点では求めていません。今のところは、日本に一時帰国した際に、私の家族とコミュニケーションが問題なくできるくらいの力はつけてもらいたいと思っています。

川合 ウチの妻も同じ考えです。バイリンガル教育をなぜするかというと、理由は色々あるのですが、まずは子どもが、英国の家族や親戚と英語でコミュニケーションできることが大切だからと常々言っています。

牧瀬 もちろん、最終的には日本の大学に通えるくらいの日本語力をつけてもらいたいですが……。

川合 「どの言語で大学に通うか?」というのは国際結婚家庭では定番のトピックですよね。それによって小・中・高校の過ごし方や学校のチョイスが変わってきますからね。ウチはまだ決断はしていませんが。ちなみに、奥様は、2人の娘さんの日本語力についてどのようなご希望を持っていますか?

牧瀬 妻は娘が高校生くらいになったら、1年間日本の高校に交換留学させたいみたいです。それまでは、日本に毎年子どもを連れて帰り、できれば短期で日本の小学校に体験入学をさせたいと言っています。

頭が柔らかい高校生で留学すると吸収力が高い

川合 高校での交換留学や、高校から現地の学校へ編入というのも、国際結婚家庭で比較的ポピュラーな選択肢のようですね。

 日本にいる僕の知り合いに、お母さんがニュージーランド人でお父さんが日本人という家庭がありまして、子ども達は皆、中学卒業まで日本の地元の公立校に通っていました。その後、お母さんのご両親のもとからニュージーランドの高校に通うことにしたんです。

 最初は大変だと思いますが、高校生だとまだ頭も柔らかいので、吸収力も高いんですよね。現在オーストラリアの大学に通う彼らは、ほぼ完全なバイリンガルになっています。まあ、両親の決断力も必要ですし、その土地で面倒を見てくれる親戚がいるかどうかもありますし、超えるべき壁は少なくないですが……。

 ともあれ、牧瀬さんのところは、ご自身も奥様も、娘さん達が将来的にバイリンガルになることを望んでいらっしゃるということですね。

牧瀬 はい、そうですね。

川合 両親が同じ方向を向く、というのはバイリンガル教育がうまく進むかどうかの1つの大きなポイントだと思います。日本に住む英国人の父親から「日本人の妻が子どもに英語で話してくれないんだよ。だから子どもの英語力が伸びない」というグチを聞くこともあるので。

牧瀬 私の友人で、母親が日本人、父親がイギリス人という一家が、3年ほど前に日本から英国へ移住してきました。彼らの子ども3人のうち長女(12歳)は完全なバイリンガルです。ただ、小さい子ども達2人(6歳、4歳)は現地校に通い始めてから、徐々に日本語から英語に切り替わり、最近ではお母さんにも英語で話すようになっています。お母さんが話す日本語は理解しているとのことですが……。やはり、お母さんとしては残念だと思っているようです。

 一方、同じ組み合わせ(母:日本人、父:イギリス人)で最近知り合ったご家族は、お母さんがかなり厳しく日本語教育をしているようです。子ども達には必ず日本語で話しかけ、そして子ども達もお母さんへは日本語で話すことを徹底しています。彼女の話を聞いて、私はかなり反省しましたね。もっと努力せねばと……。

川合 やっぱり親の努力と忍耐力が必要なんですね……。

バイリンガル教育には両親の教育方針が一致していることが重要だ
バイリンガル教育には両親の教育方針が一致していることが重要だ