時短勤務が終わってから繰り上げ返済を開始
妻 保険の見直しは、まず個人年金保険で月1万円、まだ決断できませんけど、他の積み立て型もやめてしまえば月6.5万円が浮きますよね。これは繰り上げ返済に回して大丈夫ですか?
中 繰り上げ返済については、以前の記事「年収2200万円でも、繰り上げ返済で破綻リスク」で書きましたが、やり過ぎるとかえってリスクが高くなってしまうのですね。
破綻というのは手元に資金が無くて支払いができないという状況です。多額の住宅ローンは心配だと思いますが、もっと貯金を増やしてからでも遅くありません。借金が少ないほうがいいことはもちろん間違いありませんが、一度借りた後は無理に早期の繰り上げ返済をしようとすればかえって危ないということになります。
妻 繰り上げ返済をするほうが危ないんですか?
中 そうです。手元のお金が減ってしまいますから。なので貯金を増やしてからやればいいんです。繰り上げ返済を遅らせるとどうなるか確認してみましょう。
中 目安として生活費の2年分くらいをためた後で、繰り上げ返済を始めたほうがいいと思います。2年分ためるとなるとある程度の期間はかかりますが、慌てて繰り上げ返済をしなくてもそこまで大きな差は生まれません。貯金はコンパクトでいいという場合でも、奥さまが来年6月にフルタイム勤務に復帰するくらいまで待っても良いと思います。それでも1年以上ありますので、貯金は500万円近く貯まると思います。
夫 繰り上げ返済のペースは妻に任せていましたけど、100万円はちょっと少なすぎるかもなあと思いつつ、でも利息が減るならそれはそれで良いのかな……と。基準と言うか正解が分からなかったので、任せつつもモヤモヤしてました。
中 自分が好きな『ブラック・スワン』という本の帯に「『ありえない』なんて、ありえない!」と書いてあります。お二人の収入が急に途絶えるとか突然半減するとか、そういった事態はめったに起こらないと思いますが、可能性はゼロではありません。たとえば今、貯金が100万円ではなく1000万円だったら安心感は全然違うと思いませんか?
妻 ……違うと思います。繰り上げ返済はやり過ぎだったんですね。
中 繰り上げ返済の比較は、やる場合とやらない場合ではなく、「今やる場合」と「数年後にやる場合」で比較すればいったん先送り、という判断でも大きな違いが無いことは分かって頂けると思います。過去の相談でも、頭金を入れ過ぎて貯金が減った状態で、それでもとにかく繰り上げ返済をしなきゃと考える方はいらっしゃいましたが、まずは手元資金の確保ですね。
妻 私も何が何でも繰り上げ返済、と思い込んでました。
中 多額のローンで不安を感じるのは当然だと思います。ただ、繰り返しになりますが一度借りてしまったら、無理に返すほうがリスクが高まるということは覚えておいてください。「損得」の視点で考えれば、繰り上げ返済はどんどんやったほうがいいことは間違いありません。ただ、「リスク」とか「資金繰り(手元に資金があって支払いができる状況)」という観点を入れていただくと、違う世界が見えてくると思います。そこが自分のアドバイスの特徴です。
※記事に掲載した相談内容は、長時間の相談のうち、ごく一部となります。また個人情報保護の観点から一部実際の相談内容と異なる部分もあります。