住宅購入に悩む共働き世代を、ファイナンシャルプランナーの中嶋よしふみさんがリポートする本連載。前回記事に引き続き1億円の住宅ローンを抱えた夫婦の相談を取り上げる。ローンの繰り上げ返済を焦る夫婦に対するアドバイスとは……。

 2世帯住宅で1億円の住宅ローンを抱えた西野ご夫妻(仮名)。月9万円もの保険料の支払いがあることから「保険の見直しで繰り上げ返済の資金を捻出したい」と考えてご来店頂いた。

 前回の記事「1億円の住宅ローンがある夫婦、返済どうする?」に引き続き「医療保険をどうすればよいか」という話と、続いて「メリハリをつけた保険料の抑え方」「賢い繰り上げ返済のコツ」の話となった。まずはご夫婦のデータを再度確認したい。

■年収:夫婦合わせて1350万円程度
夫(32歳) 1000万円 大手総合商社勤務
妻(34歳) 350万円 広告代理店。現在時短勤務中。来年6月からフルタイムに復帰予定

■家庭の状況
結婚3年目。3歳の男の子と1歳の女の子

■住居
武蔵小杉に二世帯住宅を3年前に建てた。土地・建物、ちょうど5000万円ずつぐらい

【購入時の状況】
頭金 500万円(諸費用)
固定金利(フラット35S) 借入額8000万円 返済期間35年 金利1.16%(借入11年目から1.86%) 返済額 約23.1万円
変動金利 2000万円 返済期間35年 1.1% 返済額 約5.7万円
毎月の返済額28.8万円

■資産
現在の貯金額 100万円
年間の貯金額 300万円くらい(ただし全額繰り上げ返済に充てている)。

■保険の状況
 収入保障保険、終身保険2つ、終身医療保険
 収入保障保険、終身医療保険、がん保険、個人年金保険(老後に保険金を受け取るもの)
保険料総額 月約9万円

■レッスン・相談の内容
住宅ローンが多過ぎるので、繰り上げ返済をもっとしたい。保険料を月に9万円払っているが、見直しをして繰り上げ返済に充てたい

2500万円もらえる生命保険でも足りない

シェアーズカフェ・中嶋(以下、中) 保険の見直し方法として、だんな様がの医療保険をやめて、収入保障保険に充てるといいと思います。

 収入保障保険はすでに入ってますけど、上乗せですか?

 今入っている生命保険は、毎月23万円の保険金が死亡時からローンの終わる32年後まで続きます。月に23万円は決して低くありませんが、これはあくまで団信(団体信用生命保険)代わりです。ですからだんな様に万が一のことがあった場合に、ローンはチャラになっても生活費が足りません。

 前回記事でも述べたが、住宅ローンを組む際、団信(団体信用生命保険)は通常加入が必須となる。住宅ローンを組んだ人が亡くなったときに借金がゼロになる、つまりその時点のローン残高が全額返済される保険だ。

 銀行では強制的に加入となるが(保険料は金利に含む)、フラット35の場合は任意加入で別途保険料が必要となる。団信の保険料は年齢に関係なく借入残高を基に計算されるため、若い人は収入保障保険(遺族が保険金を毎月少しずつもらうタイプの保険)で代用すると安くできる場合がある。

 今の保障額は、収入保障保険を除けば終身保険2つで合わせて2500万円ほどです。これだと少ないと思います。

 2500万円でも足りませんか?

 正確な額をシミュレーションするには、キャッシュフロー表というものを作って「必要保障額」を計算する必要があります。ただ、だんな様の年収は1000万円ですから、2500万円は手取りで考えても3年分くらいしかありません。だんな様の生活費は不要になりますから出費は当然減りますが、公的な保障を考慮してもお子さま2人の生活費と教育費を考えると全く足りないと思います。