こんにちは、治部れんげです。本連載を通して、子どもに関する社会問題に怒りを覚えた際、どんな解決方法があるのかを考えてきました。例えば、政治問題にもっと積極的に関わろうと呼びかける試みや、地域のママが立ち上がって保育園増設を求めた運動などを紹介してきました。今回は少し視点を変え、論理的な思考、そして、数字をきちんと見ることによって得られるものについて考えます。

金融企業経営者の忙しさにもかかわらず、地域の子育て政策づくりに深く関与

楠田喜彦さん
楠田喜彦さん

 今回ご登場いただくのは、楠田喜彦(くすだ・よしひこ)さん。40代の金融マンで、昨年、マザーズに上場したファイナンス系企業で商品開発担当執行役員を務めています。共働きで、小学生のお子さんが2人います。

 筆者はつい最近まで、楠田さんと同じ東京の文京区に住んでおり、保育園の保護者の会を通じて知り合いました。お互い「子どもは社会の宝」とか「質の高い保育環境が大事」と考えるだけでなく、「子どものための政策を勝ち取るために、論理的にものを考え、幅広いステイクホルダー(利害関係者)の合意を得ることが大事」という視点も共通しており、意気投合しました 。

 役員任期が終わった後も、地元の「子ども・子育て会議」の委員になった楠田さんから、「こういう提案をまとめようと思っているのですが、どう思いますか」という趣旨のメールが届きました。

 緻密な内容に「すごいなあ」と感心しただけでなく、考え抜かれた提案に「この人は保育政策の専門家だったっけ?」と思ってしまうことも多々ありました。楠田さんの専門分野は金融ビジネス。リーマン・ブラザーズで住宅ローンを扱う日本子会社の社長を務めていたこともあるのです。

 そんな忙しそうな人がなぜ、保育園の活動に? さらに、なぜ、子ども・子育て会議の委員まで? と良い意味で疑問に思い、今回、インタビューにご登場いただくことにしました。

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役員を引き受けた妻が直後に第二子妊娠。やむなく顔を出して巻き込まれた

治部 楠田さんが保育園の活動に関わったきっかけを教えていただけますか?

楠田さん(以下、敬称略) 本当に偶然なんです。動機は不純で、上の子が保育園に入って2歳のころ、「下の学年で役員をやっておいたほうが面倒が少ない」と聞いたから。ところが、妻が役員を引き受けたとたん、妻は第二子を妊娠し、つわりで役員の係決めの会議に出られなくなり、やむなく僕が顔を出したら巻き込まれてしまいました。

―― 本当に「偶然」ですね。

楠田 そんな形で父母会に関わり始めたところ、区の保育園保護者の役員会の連絡会に出る係になったのです。「楠田さん、ゴルフしないから土日空いているよね、この会議に出る係をやってちょうだい」みたいな感じで。前任者からは「黙って資料をもらってきて」と言われただけ。始まりは、めちゃくちゃ消極的でした。

 最初は黙って参加していたのですが、そのうち、「もっとこうしたら効率がいいのでは?」とか「こういう風にしたほうが、保護者の主張が通りやすいのでは?」と言いたいことが出てきて、口を出したら、翌年はその連絡会で役員をやるはめになっていました。

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