こんにちは。武蔵野大学講師の舞田敏彦です。今回は年収のお話です。第14回の記事「男女の年収格差は最大252万円にもなる」では、就業者の平均年収の性差・年齢差・学歴差を見たのですが、今回は地域差という視点を据えてみようと思います。
エンリコ・モレッティ著『年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学』(プレジデント社)という本が話題になりましたが、わが国でも、人々が手にする富の平均量は地域によってかなり異なるでしょう。ここでは、その構造の一端を明らかにしてみます。「お金持ちの地域はどこ?」という好奇心もありますが、もっと深い問題意識も抱いています。それは後で述べることとし、まずはデータを見ていただきましょう。
東京・港区では、年収1000万以上の世帯が25%以上
私は、官庁統計のデータを使って、首都圏(1都3県)の区市町村別の平均世帯年収を計算してみました。総務省の「住宅土地統計」では、各地域の世帯数が年収階層別に集計されています。
ここでいう年収とは、「世帯全員の1年間の収入(税込み)」であり、「給料・賃金のほか、ボーナス・残業手当などの収入、内職や副業による収入、年金・恩給などの給付金、配当金・利子・家賃・地代などの財産収入、その他仕送り金など」を含みます。これをもとに、それぞれの区市町村の平均世帯年収を算出しました。
東京都の港区を例にして、計算の方法を説明します。最新の2013年調査のデータによると、当該区の世帯の年収分布は表1のようになっています。年収が判明した9万9130世帯の分布です。
年収700万円以上1000万円未満の世帯が最も多く、全体の2割がこの層に属しています。さすがといいますか、東京都の港区では高年収の世帯が多く、年収1000万以上の世帯が26.5%、全体の4分の1を占めています。