テレワーク(在宅勤務)導入に積極的に取り組む企業の事例を紹介しながら、多くの企業が導入時にぶつかりがちな問題点と対策法を紹介するこの連載。企業へのテレワーク導入支援を手掛けるテレワークマネジメント社の代表、田澤由利さんがお届けします。
 第3回で取り上げるのは、大手スポーツメーカーのウエアデザインを手掛ける「有限会社ユー・プランニング」。社長自身が子育てをしながら起業したこともあり、女性の能力を生かすために早くから在宅勤務を導入。でも、あえて「在宅勤務は子育てのためではない」と言い切る社長に、田澤さんがインタビューしました。「在宅勤務を失敗させない3つ目のポイント」とは?

ユー・プランニング 平有子社長
ユー・プランニング 平有子社長

 商売の街、大阪・心斎橋の商店街。ブティックのあるビルの6階にユー・プランニングはある。平有子社長は、ご主人を亡くされてから女手一つで子育てし、会社を切り盛りしてきた、ナニワの元気でおしゃれな女性社長だ。

 私が平社長に初めてお会いしたのは、3年前。「企業への在宅勤務導入コンサルティングをしています」と自己紹介すると、「うちの会社も、在宅で仕事してますよ~」と一気に意気投合した。

在宅勤務が無かったら、今、半分以上の社員はいない

―― 平社長は、テレワーク、特に在宅勤務を早くから導入されていますが、会社にとって一番のメリットは何ですか? (※テレワークは在宅型とモバイル型に分類される。在宅勤務は、雇用されている人が在宅型でテレワークすること。著者によるテレワークの分類はこちらを参照)

平有子さん(以下、敬称略) メリットも何も、テレワークができなかったら今、ウチを支えてくれている社員の半分以上はいなかったと思います。私自身もテレワークができなかったら、子育てをしながらここまで来られませんでした。

 今は社員21人中、6人が基本在宅勤務ですし、週1日くらいのペースでよければ、社員全員が在宅勤務経験者です。家庭の事情で通勤ができなくなった男性社員は、家族と離れて暮らすことなく、テレワークで仕事をし、今も業界の第一線で活躍しています。「週3日通勤」「終業16時」と、子どもが学校から帰るまでの時間で仕事をしている女性社員もいます。

在宅勤務ができないと「時間」も「人」ももったいない

―― まだテレワーク、特に在宅勤務を導入している企業が少ないのが現実です。これについてはどう思われますか?

 「在宅勤務=子育てのため」と、思っている経営者が多いのではないでしょうか。

 (おもむろに紙とペンを取り出して何か書き始めた)

 例えば、会社からB社を訪問した。自宅はB社の近くなのに、また会社に戻って報告書を書いてから自宅に戻る。この間の「移動時間」、もったいないと思いません? 自宅で報告書を書いてくれたほうが、残業代も少なくなって会社も助かるんです。

 人材もそう。こんな例があるんです。会社でフルタイム勤務のAさんが夕方、子育て中で在宅で働くBさんに仕事をパスするという形で、長年ペアで仕事をしてきた。Bさんが子育てを終えて、会社でのフルタイム勤務に戻ろうとしたころ、Aさんが親の介護で在宅で働くことになった。柔軟な働き方で人材を有効活用できるって、会社にとって何より大きなメリットなんです。