犯罪や事故、災害などで、子どもが被害者になってしまうことがあります。子どもをリスクから守るために、親は何をすれば良いでしょうか。前回の記事(「連れ去りや性犯罪被害に遭う子どもの低年齢化が進む」)では、『こどもあんぜん図鑑』(講談社)の監修者で、危機管理アドバイザーの国崎信江さんに、最近の犯罪の傾向とその対策について伺いました。今回は、生活上の事故や災害など、普段の生活の中に潜んでいる危険についてお話を伺います。

過保護にせず、成長にあった自立を促す家庭環境を

──今回は、けがや病気など、日常生活のなかで気をつけなければいけないことについて教えてください。

国崎 子どもが夢中になる遊びの中にも、危険が潜んでいます。たとえば友達とぶつかる接触や転倒事故、遊具からの転落、ボール遊び中のケガなどです。自宅では窓やバルコニー、階段からの転落、ドアの指はさみ、炊飯器などの蒸気によるやけどや、火遊びによる火事などです。

 こうした危険は、そのようになることを知らなかった、適正な使い方をしていなかったことなどが原因で起こりやすくなります。保護者はこのような危険についてしっかりと子どもに教えてあげてください。

ブランコに乗っているときは、周囲の様子に気をつけて
ブランコに乗っているときは、周囲の様子に気をつけて

──両親とも仕事をしていて、その場で注意することもできないときはどうしたらいいのでしょうか。

国崎 子どもがケガをしたことを知った時、その都度子どもに何が起きたかを聞くといいと思います。そのときにどのような事情でケガに至ったのかを聞くと同時に、繰り返さないために保護者ができることを考えてみてください。子どもにも、同じ事を繰り返さないために、次回はどのようなことに気をつけるべきかを考えさせましょう。

 ところで、致命的なケガでない限り、ケガの体験は自分を守るうえでの貴重な経験だと私は考えます。転ばないようにあらゆる危険を排除し行動を制限するより、保護者の監視下にある安全なフィールドにおいて自由に行動させることが重要だと思うのです。自由な行動の中で、結果的にケガをしたとしても、その痛みを知ることで自分を守る行動につながっていきます。

 子どもは大人より体が柔らかく、治癒力も高いことから、成長期にこそケガをおそれず様々な体験をすべき時期であると思います。最近では転んだときに手より頭が先に出て大けがを負う子どもが増えてきていると言われています。転ぶ経験が乏しいと「転んでも大けがにならない」転び方を知らず大事に至ってしまうのかもしれません。

 私たちは成長の過程でいろいろな経験を積み、ときには痛みを覚えながら、自分の身を守るノウハウを学習しているのだと思います。子どもを守るという意識の中で、つい過保護にしてしまいがちですが、愛情で見守りながらも、自分を守る行動につながっていく経験も大切にしてほしいと思います。

「子どもを守りたいがために過保護にしすぎると、必要な時期に必要な経験ができなくなる」と話す国崎さん
「子どもを守りたいがために過保護にしすぎると、必要な時期に必要な経験ができなくなる」と話す国崎さん