子どもを被害者にしないために、親ができることとは

──そうはいっても、そんなに簡単に騙されるものなのでしょうか。

 たとえば、髪形や服装がかわいい子どもを見つけると、すかさず「君、かわいいね。モデルになれるかもしれない。モデルに応募するための写真を撮ってあげるよ」や「子どもの洋服を作っているデザイナーだけど、モデルになってくれない?」などと甘言や虚言を用いて巧みに誘います。このような誘いを信じてしまう子どもや、「君の通っている小学校で働くことになったんだけど、小学校までの道のりを教えて」など、先生や警察というニセの肩書きに騙されてしまうこともあります。

──しかし、写真撮影などで夜が遅くなれば親が気づきそうですが。

 写真撮影といっても、夕食の時間までに終了させるようにするんです。そして最寄り駅まで車で送る。帰宅の時間が遅くならないので家族に気づかれない。そこまで巧妙な手口を使うのです。

「子どもは大人に騙されやすいので、そういう状況にならないことが大切」
「子どもは大人に騙されやすいので、そういう状況にならないことが大切」

──子どもをそんな被害から守るために、親はどうすればよいのでしょうか。

 自分の子どもは狙われやすい服装や行動をしていないか観察してみましょう。また、子どもが被害に遭う報道において「かわいそう」という気持ちで終わらせることなく、子どもに「このようなとき、あなただったらどうする?」と語りかけてください。

 「自分の子どもは大丈夫」と、根拠のない安心感を持つことなく、わが子だったらどうするか、被害に遭わないために保護者は日ごろからどのようなことに気をつけ、何を子どもに伝えればいいのかを考えることが大切です。その上で、まずは身近な場所として子どもの行動範囲において危険な場所がないかを確認しましょう。

 危険な場所を探す際の留意点として、たとえばおけいこや塾などに通わせる時には、行きの昼間と帰りの夕方、または夜の環境の違いを認識しておきましょう。昼間に安全な場所が夜も安全とは限らないからです。時間によって人通りや状況が変わることがあります。たとえば、同じ商店街でも、昼間の様子と、夜に全てのシャッターが閉まって暗いときや、夜のネオンがきらびやかなときでは環境ががらっと変わります。夕方や夜になったときに、その道が安全であるかどうかを確認しておきましょう。時間だけでなく、季節や気象状況でも変わるので注意が必要です。

 また、「慣れた道だから大丈夫」と考える子どももいますが、「慣れた場所だから安全とは限らない」ことをしっかりと伝えましょう。「いつもの道」「慣れた道」という気持ちが警戒心を低下させるのです。

──あまり安全でない道でも、他に選択肢がない場合はどうすればよいでしょうか。

 できれば親が送り迎えしてほしい。でも、事情によってそれができない場合もありますね。そういうときは、周りを見て、1人になったら防犯ブザーをいつでも鳴らせるように手に持ち、後ろをよく振り返りながら、さっそうと早歩きをします。角を曲がるときには大回りをして、カーブミラーがあれば、それを利用しながら、隠れている人がいないかどうかを確認しながら歩きましょう。

 歩き出す前に、保護者に連絡することを習慣にして、保護者は電話が来てから何分後にどこを歩いているかをイメージしておき、予想時間になっても到着しない場合にはすぐに迎えに行くなどの行動を取りましょう。いざという時に助けを求める場所についても話し合って確認しておくことが大切です。

──この時、子どもとはどういう風に話をすればいいですか。

 一方的に指導するのではなく、「『モデルにならない? プロの写真家だから写真撮ってあげる』って言われたら、どうする?」というように、質問してください。

 いつも親が助けてあげられるわけではないので、子どもが自分の判断で危険を回避したり、いざというときに対処したりできるようにしなければなりません。そのためにも、まずは子どもに考えさせましょう。子どもが一生懸命考えて出した回答に対して、決して「そうじゃない」と否定しないようにしてください。なるほど、と子どもの考えを受け止めながら、お母さんならこうするわ、というように適切だと思われる行動を伝えましょう。

 ここからは、国崎さんが監修した「こどもあんぜん図鑑」を使って、実際に親子で取り組みたい問題を出してみます。ぜひお子さんと一緒に、親子で考えてみてください。