「耳が聞こえない」ことを除けば、どこにでもいるような男の子
息子の礼夢(らいむ)は10歳。小学5年生になりました。
今、サッカーに夢中です。小学校の体育でやってみてハマったらしく、友達とボールを追いかけたり、家ではサッカーゲームで遊んだり……。レアルマドリードのロナウド選手が大好きです。
性格は天真爛漫で優しいです。でも、好きな子にはついついちょっかいを出しちゃうタイプ。そして、「好き」って言えない。そのうち、お目当ての女の子は他の男の子と遊び始め……と、割と残念な男子です(笑)。
毎日、元気に学校に通い、友達と遊び、目を三日月型にしてよく笑います。将来の夢は前は「お寿司屋さん」。最近は「吉野家の店員さん」になるんだと言っています。最近は、私からチューされるのを嫌がり始めました。
そう。礼夢は「耳が聞こえない」ということを除いたら、どこにでもいるような男の子なんです。
礼夢の耳が聞こえないと分かったのは、生後3日後の検査のとき。耳が聞こえるか、聞こえないかを検査する「新生児聴覚スクリーニング検査」というものがあって、「この検査を受けますか?」と看護師さんに聞かれました。「せっかくだから」と何のためらいもなくお願いして、部屋で待っていたところ、「耳が聞こえにくい」と告げられました。そして2カ月後、大学病院で精密検査を受け、先天性の「高度感音性難聴」だということが判明。礼夢は生まれつき、音が全く聞こえないということだったんです。
「聞こえない」と言われても、最初は全然ピンと来ず、病院では冷静だった私でしたが、夜になると一気に涙があふれてきました。当時の私は20歳。まだまだ未熟者で「赤ちゃんは五体満足で、健康で生まれてくるのが当たり前」と思っていました。そして、お腹のなかにいた礼夢に「私の歌を早く聞かせたい」とずっと願っていました。「いつかライブに来て楽しんでもらえるように頑張らなくちゃっ」て。
それなのに、礼夢は音が聞こえなかった。両親揃って歌を歌う仕事をしているのに、パパとママの歌を聴いてもらうこともできないの――?
礼夢に「聞こえるように生んであげられなくてごめんね」と何度も謝って。もう、一生分の涙を流したと思うくらい。初めて、神様を憎みました。