“日本サッカーのご意見番”として人気のセルジオ越後さん。延べ60万人以上の子どもにサッカーの楽しさを伝え続けてきた「さわやかサッカー教室」の主催者としても有名で、現在はアイスホッケーチーム「H.C.栃木日光アイスバックス」のシニアディレクターを務めています。

 サッカーのみならず日本スポーツ界に貢献しているセルジオ越後さんに、スポーツを通した親子の接し方について話を伺ったこの特集。第1回の「セルジオ越後が叱る『日本の親は遊び心がない!』」、第2回の「日本独特の『補欠』が子どもをダメにする!」、第3回の「親子で苦労しよう、という日本人の発想は良くない」に続き、最終回は、わが子のことにしか興味を持たない親たちを叱りつつ、スポーツを通じて変わる方法を教えてくれました。

主な内容
●なんで日本人の親は、わが子の面倒だけ見ようとするの?
●親は、他の子どもと仲良くなることが重要なの
●父親は、わが子がいないチームの世話をすればいい
●スポーツは、子どもが「親離れ」するためにやるものだ
●野球の名選手だった高木豊さんが、父親として立派な理由
●手伝ってくれる親への感謝が、子どもたちに芽生える
●親は子どもにとっての「良い上司」になるべき

なんで日本人の親は、わが子の面倒だけ見ようとするの?

── スポーツを通して世界を見てきたセルジオさんですが、日本の教育については、いかがお感じですか?

セルジオ越後さん(以下、敬称略) 今の日本の社会っていうのは、「自分の子ども以外を教育できない社会」になってしまったのね。社会教育がなくなってしまった国だということだね。

 この社会教育って何かと言えば、「わが子以外の子どもたちも、社会人として、人間として教育する」ということ。昔の日本はそうだったし、今でも地方の田舎に行けばそういう社会が残っている。ところが、特に大都市の大人たちの多くは、そうではなくなってしまったのだよね。

 例えば電車に乗っていても、態度の悪い子どもを見かけたとしても、大人はみんな知らん顔でしょ。眉をひそめることはするかもしれないけれど、「ウチの子どもじゃないもんね」っていう感じだね。

── 地域で子どもを育てることがなくなっていったということですか?

セルジオ越後 そう。わが子以外の子どもでも注意をしたり、触れ合うなかでいろんなことを教えてあげて育てていこうという意識がすっかりなくなってしまった。最近の子どもに関する悲惨な事件を見ると、大人たちはみんな知っていたのに何もしていなかったんじゃないかと思っちゃうのね。

 いつも僕は思うのね。なんで日本人の親たちはわが子の面倒だけ見ようとするの? 自分の子どもだけ見てばかりでどうするのよ? そこを変えなかったら、日本のスポーツ文化も、社会教育も変わらないよ、っていうことを言いたいね。

 長年、サッカー教室をやってきたけれど、学年ごとにクラスに分けて教室をやっていたら、付き添いで来た親は自分の子どもの学年クラスの様子だけを見て、そのクラスが終わったら帰ってしまうんですよ。学校でもそうなのね。運動会だとプログラムとにらめっこして、自分の子どもの徒競走だけ見て、終わったら帰ってしまうのね。親たちはわが子以外の子どもたちに興味が無いんですよ。