共働き世帯にとって保育園や学童の運営など、子育て支援を担う自治体は頼りになる存在であってほしいもの。このたび日経DUALでは、読者に代わって、自治体の首長への突撃インタビューを開始しました。最初は東京23区に取材を依頼し、区長に質問をぶつけます。

今回は練馬区。東京都の福祉局長時代に「東京都認証保育所」制度を立ち上げて、民間の参入を促すなどの改革を行い、2014年に初当選した前川燿男区長。2015年4月を目安に1300人という大規模な保育定員増を行って待機児童の解消を目指しますが「待機児童の解消は、あくまでも問題解決の一端」と語ります。現状を俯瞰した子育て政策を聞きました。(インタビューは2014年11月下旬に実施)

前川 燿男 区長

1945年、鹿児島県生まれ。大学卒業後、71年東京都入庁。2000年に福祉局長、2002年に知事本局長に就任し、2005年に東京都退職。東京ガス株式会社執行役員に就任。2009年、政策研究大学院大学客員教授となり、2014年、練馬区長に初当選。現在1期目。

「東京都認証保育所」制度の立役者。「行政はなぜ威張っているんだ?」

前川燿男・練馬区長
前川燿男・練馬区長

DUAL編集部 前川区長は、東京都の福祉局長時代に独自の「東京都認証保育所」制度を立ち上げて、民間の参入を促しました。東京都認証保育所の設立には、どんな背景があったのでしょうか?

前川区長(以下、敬称略) 入都して福祉局に配属されていたころに現場で感じていたのは「保育も含め行政施策はサービスなのに、なぜ役所が威張っているのか」という疑問でした。民間のサービスであれば利用者が自分の希望にかなった商品を選ぶことが当然。それなのに、行政が提供するのはお仕着せであり、しかも住民が「サービスを使わせていただいて感謝する」という構図になってしまう。これはおかしいのではないか、と。

 そこで、自分が局長になったら、福祉改革を行おうと思っていました。まず、住民がサービスを選べるようにすること。2つ目は事業者が競い合い、良いサービスを提供できるようにすること。3つ目は、住民が自分が住む地域の中でそのサービスを利用できるようにすること。保育所だけでなく、高齢者の福祉サービスなど、利用者が多数いる行政施策についても同様の考え方を取り入れようと考えました。

 しかしそういう改革を実施すると、今度は「公の責任を放棄した」と批判する人が必ずいる。高齢者や子どもの問題はとにかく規模が大きいので、サービスの質の向上には事業者の努力が求められます。民間のサービスと競争することで、お互いに磨き合っていいものが生まれます。行政は、「施設サービスを認可し、指導監督する」というところで責任を担保すればいい。私はそう思っています。