「東京都認証保育所」制度の立役者。「行政はなぜ威張っているんだ?」
DUAL編集部 前川区長は、東京都の福祉局長時代に独自の「東京都認証保育所」制度を立ち上げて、民間の参入を促しました。東京都認証保育所の設立には、どんな背景があったのでしょうか?
前川区長(以下、敬称略) 入都して福祉局に配属されていたころに現場で感じていたのは「保育も含め行政施策はサービスなのに、なぜ役所が威張っているのか」という疑問でした。民間のサービスであれば利用者が自分の希望にかなった商品を選ぶことが当然。それなのに、行政が提供するのはお仕着せであり、しかも住民が「サービスを使わせていただいて感謝する」という構図になってしまう。これはおかしいのではないか、と。
そこで、自分が局長になったら、福祉改革を行おうと思っていました。まず、住民がサービスを選べるようにすること。2つ目は事業者が競い合い、良いサービスを提供できるようにすること。3つ目は、住民が自分が住む地域の中でそのサービスを利用できるようにすること。保育所だけでなく、高齢者の福祉サービスなど、利用者が多数いる行政施策についても同様の考え方を取り入れようと考えました。
しかしそういう改革を実施すると、今度は「公の責任を放棄した」と批判する人が必ずいる。高齢者や子どもの問題はとにかく規模が大きいので、サービスの質の向上には事業者の努力が求められます。民間のサービスと競争することで、お互いに磨き合っていいものが生まれます。行政は、「施設サービスを認可し、指導監督する」というところで責任を担保すればいい。私はそう思っています。