“よく訓練された子役”より“本当の子どもらしい子ども”
──本作にはアニーを含めて孤児役が8名いますが、すべてダブルキャスト。劇中劇を演じるタップキッズをあわせると40名近い子役が出演します。これだけたくさんの子どもの演技指導は大変ではないでしょうか?
実際のところ、僕はそれほど“子役”と“大人”を分け隔てしていません。なぜなら、演技というのは本質的に“子どものごっこ遊び”の延長。70歳の名優だって、自分ではない誰かになりきるという意味では、子どもがお姫様だったりヒーローの“ふり”をするのと同じなのです。
──とはいえ、子どもにはどうしてもやる気の「波」があるかと思います。どんなことを心掛けていらっしゃいますか?
僕は“よく訓練された子役”より“本当の子どもらしい子ども”が好きなので、稽古場ではなるべく地のままでいてもらっています。最初はみんな遊び心全開で、そこからだんだん集中していきます。リハーサルは楽しい雰囲気の中でやってこそ一生懸命になれる、と僕は思っています。
うまくいかない様子の時には、なるべく想像力を刺激するような言葉がけを心掛けています。もしこういう状況だったら、君はどうするかな、どう動くかな?と。逆に、僕が絶対にやらないのが、お手本を見せるかのように、ダブルキャストのもう一組の稽古を見せること。『アニー』では孤児役が2つのチームに分かれていますが、それぞれ、別の時間に稽古しています。それによって微妙に段取りが変わったりもするけれど、僕は揃えるのではなく、様子を見守る。そのほうがそれぞれ、よりダイナミックな芝居に仕上がってゆくのです。
──大人のキャストでは今回、ウォーバックス役を三田村邦彦さんが昨年から続投されます。彼のウォーバックス役はいかがですか?
歴代のウォーバックス役の中でも僕のお気に入りの一人です。ウォーバックスは生まれながらの大富豪ではなく、貧乏な環境からこつこつとお金を貯めて這い上がってきた。そういう人物の雰囲気を、三田村さんは非常にうまく醸し出していますよ。