進化すればこその難産体質が結んだ家族の絆。しかし……

 最後に少し脱線して、私達が家族をつくることとヒトの進化の関わりについて。

 大きな脳(=大きな頭)を獲得したことと引き替えに、ヒトは難産という宿命を背負いました。他の哺乳類とは対照的に、泣くことしかできない未熟な(まだ頭が小さな)状態で赤ちゃんを産むのは、出産を少しでもスムーズにするためです。

 いきおい、お母さんは出産を終えるなり付きっきりで赤ちゃんの面倒を見なければならず、なればこそ無防備な2人を守り、男ならではの「力技」で食糧を手に入れてくるお父さんの存在が欠かせなくなりました。

 ここに成立したのが、ヒトの生活単位としての家族です。赤ちゃんがそこそこ大きくなったら、お母さんは木の実などの採集でお父さんと一緒に家計を支えるという具合に、この家族という「群れ」はなかなかうまく機能してきました。

 しかし、ここに来て家族は重大な転機を迎えていると、真家さんは考えています。

 「今はお母さんがインターネットを使って自宅で子育てをしながら働ける時代です。お母さんや子どもを守るために、男の『力技』が必ず必要ということはない。むしろその力技を母親も分担することが当たり前になってきました。そうすると、生物学的に見れば、父親が家庭に存在する必然性が揺らいでいるとも言えます。お父さんは家族における新たな存在意義を、意識的に切り開く努力をしたほうがいいかもしれません(笑)」

 

(文/手代木建 写真/鈴木愛子)