進化の弊害? 下アゴの縮小が歯の健康を脅かす

 ヒトの頭は次第に真ん丸になり、下アゴは縮小し先がつんととがっていく……。この変化は近年にわかに加速しているのだとか。見た目の問題だけならともかく、同時に看過できない深刻な事態も進行しているといいます。

 「アゴの縮小が進む一方で、歯の数が減りつつあります。厳密に言うと歯の生え始めが遅くなっているせいで、生きているうちに生える歯が減っているのです。親知らずと呼ばれる第3大臼歯はすでに生えない人がたくさんいます。生える人も大人になってからで、しかもアゴが縮小した分スペースが足りないため横向きに伸びたりする。放っておくと伸びるだけ伸びてアゴを破壊しかねないので、早めに抜かないといけません。近年では犬歯側の左右切歯(前歯)が2本が生えない人も出始めています」

 厄介なのは、歯が生えなくなるよりもアゴが小さくなるペースのほうが速いこと。親知らず以前に歯が生える十分な場所が無いため、歯と歯が窮屈にくっついた状態で生えたり、歯並びが乱れる「乱ぐい歯」になったりしやすくなっています。

 「この傾向は今の子どもよりもその子ども、さらにその子ども……と世代を重ねるほど強まります。そもそも生える場所が狭いせいでやむにやまれずそうなっているわけですから、無理に矯正するのは考えもの。もちろん歯医者さんと相談したうえで、まずは入りきらない歯を抜くのも一つの方法です」

 ——続く次回の記事では、環境の変化に対応するなかで私達の体はどう変わっていくのかについてお話しします。

(文/手代木建)