「環境の変化による淘汰」だけが進化の原動力ではない

 進化という考え方が世に広まったのは、19世紀、イギリスのダーウィンが提唱してからのこと。彼の主張をあえて一言で言い表せば「適者生存」ということになります。

 例えば、ある動物は肌がツルツルだったのに、遺伝子の突然変異で毛がフサフサの子どもが生まれたとします。仮にその後、気候が寒冷化したら、肌がツルツルの個体は寒さに耐えられずに淘汰され、毛がフサフサの遺伝子を持った個体だけが生き延びるということが起こり得るでしょう。この場合、その動物は毛がフサフサになるという進化を遂げたことで環境に適応したことになるわけです。

 この「自然淘汰説」は今も進化を説明する中心的な考え方ですが、実はこれがすべてではありません

 「例えば、マンモスの牙やオオツノシカの角は、進化過程で巨大化したことが分かっています。しかし、度を過ぎて大きい牙や角はむしろ邪魔です。生き残りに有利とは言えないその種の進化は自然淘汰説では説明できません」

 そこで浮上するのが「定向進化説」。マンモスの牙が必要以上に大きくなり続けたように、一定方向への進化が訳も無く続く傾向を指摘する説です。ブレーキの利きが悪くてなかなか止まれない乗り物をイメージすると分かりやすいかも。

 進化を説明する理屈は他にも色々あります。ここではすべては紹介できませんが、「強い者が生き残る」の一言だけで説明がつくほど、生き物の世界は単純ではないのです。