ディベート力が日本人には圧倒的に不足している

スプツニ子!さん(以下、スプ子さん) 私は、ディベートをもっとやるべきだと思いますね。教科書にはいつも正解が載っているけれど、実際の世界は「正しいか悪いか」なんてすごく曖昧なことだらけじゃないですか。私が育った過程は、小学校は新宿区立、中学校はインターナショナルスクール、高校はアメリカンスクール、大学はロンドンでしたが、一番鍛えられたのが中高時代のディベートの授業でした。進行形で起きている紛争の問題や原爆の問題とかデリケートな問題も、中高生が真剣に議論するんです。AかBかという立場に分かれて議論した後、今度は立場を入れ替えてまた議論する。こういう訓練をしていると、感情抜きに議論するテクニックが身につくし、何より意識が変わるきっかけになる。日本人に圧倒的に不足している部分だと思うから、議論する力は鍛えていかないといけないなと思います。

昭恵さん ところで、前から聞きたかったのですが、スプツニ子!さんは本名なの? 

スプ子さん 本名じゃありません(笑)。高校時代につけられたニックネームでロンドンのクラブで活動していたらいつの間にかMIT「プロフェッサー・スプツニ子!」と呼ばれていて、もうこのまま行くしかなくなっちゃったんです(笑)。スプートニクというロシアの衛星の名前が由来で、私が背が高くてロシア人みたいだからという理由で友人がつけたんです。

昭恵さん 疑問が解決して、スッキリしました(笑)。教育で私が一番大事だなと思うのは、「自分の頭で考える力」を育てることです。「UZUの学校」の開校式で登壇していただいた方々の中に、仁禮彩香(にれいあやか)さんという女子高生がいますが、彼女がとても面白いんです。就学前はアメリカンスクールの幼稚園で過ごして、私立の小学校に入学した時に「先生が決めた正解を求められる」環境に疑問を感じて辞めました。そして、出身の幼稚園の先生に頼み込んで小学校を作ってもらって、児童たった2人でオリジナルの学校に通い始める。そこでは、普段生活をしていて疑問を感じてきたことを持ち寄って話し合うような授業や、椅子を作るために木の枝を使って割り算を覚えるような授業をやっていたと。彼女は客観的な視点も持っていて、「日本の教育についておかしいと思うなら、日本の教育も知っておかなければ」と中学校は私立学校に入学したそうです。その時は漢字も算数も遅れていたようですが、もともと賢い子なので、本気を出したらすぐに勉強は追いついた。中学2年生の時に起業して、今は会社経営をしていて、世界の子どもたちをつなげるソーシャルネットワークサービスを開発したりしているみたいです。

小川さん 僕もお会いしていますが、コミュニケーション能力や発想力も抜群で、すぐにでもベンチャー企業で活躍できるんじゃないかと思えるような人材です。

昭恵さん 高校生同士が議論する「高校生未来会議」に参加したときに、そこに来ていた小学3年生の男の子も面白かったです。聞くと、主催者に「おもしろそうなので行ってもいいですか?」と事前に問い合わせ、「いいですよ」と言われて参加したようで。当日は高校生が発表するパワーポイント資料を彼が作っていて、ちゃっかり自分の意見も入れていました(笑)。こういう子どもたちに触れると、日本の未来は明るい!と元気になれます。そして、子どもたちの力を引き出すのが「自分の頭で考える教育」だと思います。

小川さん 親の期待や考え、古い価値観を押し付け過ぎない意識も、すごく大事だと思います。受験にしても、狭い世界、古い価値観の中で優勝劣敗を決めるようなものではなく、勉強して自分を育てることで、個人や社会の未来をつくるプロセスに過ぎませんから。環境はどんどん変わっていくし、いまの価値観が未来の価値観とは限らない。だからこそ、どんな未来が訪れても切り開いていける力を身につける教育が必要ですよね。