2014年7月、49歳以下の女性を対象に新しいカタチの講座型スクール「UZU(うず)の学校」が開校した。校長は、首相夫人である安倍昭恵さん。安倍昭恵校長と共に学校の構想を温めてきたグランドデザイン代表の小川和也さん、そして「UZUの学校」に講師の1人として参加したアーティストのスプツニ子!さんの3人が待つ首相公邸に、「『UZUの学校』が気になる!」と日経DUAL羽生祥子編集長が飛び込んだ。各世界の産業やアート分野を率いるイノベーターたちが感じている日本の潜在的可能性や魅力は何か? そこから見えてくる子どもたちに贈りたい教育の形とは? はたまた首相ご夫妻の家事分担のリアルまで、本音で語ってもらった。全3回シリーズの第1回「安倍昭恵 子どもたちに伝えたい日本が誇る魅力」に続く第2回は、女性活躍について企業と男性の「本音と建て前」に迫ります。

安倍校長「男女差別は社会の問題として根強い」

羽生編集長(以下、羽生) 「UZUの学校」の設立趣旨やプログラムを拝見すると、「女性の活躍」を後押ししたいという思いを強く感じます。参加条件も「49歳以下の女性」に限っていますね。なぜ、“女子校”にしたんですか?

小川和也さん(以下、小川さん) 構想段階では、特に対象を女性限定にしていたわけではなかったんです。教育や医療福祉など、大枠の社会的課題を昭恵さんとディスカッションし、学校のコンセプトを練っていくうちに、女性の社会進出や生きやすさに関する取り組みのプライオリティが高くなっていきました。

安倍昭恵さん(以下、昭恵さん) そうですね。私の思いとして、やっぱり女性に光を当てたいというのがありました。男女差別は表面的にはなくなってきているかもしれませんが、まだまだ社会の問題として根強いと思っています。あえて女子校にすることで期待しているのは、女性のリーダーが自然と育つこと。共学だと何となく男子に遠慮して発言しなかったり、リーダーシップを発揮できる女子が引っ込んでしまったりしますよね。 女性だけの集まりの中だと思い切り力を出せる女性が増えるのではないかと考えています。年齢を49歳以下にしたのも、若い人が主役になってもらいたいからです。おばちゃま方はおしゃべりだし、ついお説教したくなるかもしれないので(笑)。

右から日経DUAL羽生祥子編集長、安倍昭恵さん
右から日経DUAL羽生祥子編集長、安倍昭恵さん

羽生 スプツニ子!さんは作品の中でもジェンダーの問題をよく取り上げていますよね。日本社会の中での女性の見られ方や振る舞い方について、どう感じていますか?

スプツニ子!さん(以下、スプ子さん) まだまだ改善できる所があると感じますね。社会の制度としては男性と同等な環境が整いつつあっても、社会の価値観のシフトが遅れているから、優秀な女性が委縮しているように思うんです。女の子が大人へと育つ段階のいろいろな場面で、「女の子だからおとなしくしなさい」とか「そんなに頑張らなくても」なんて言われると、ちょっとずつ自信が削られちゃう。だから、私は若い女子には「何かチャレンジしようとする時に『できないかも』って不安に思ったとしても、見えない暗示をかけられているのかもしれないと思って!」と言ってるんです。「できる!」って自分に自分で暗示をかけ直せば、絶対にできるようになる。逆に男の子は、できないことも何でもできると思うように育てられるから無謀な挑戦もできて成長する機会をつかみやすいという面はあると思う。成長には、背伸びが必要ですよね。

「ものさしを作る側」にどんどん女性を入れないと

羽生 スプ子さんが所属していらっしゃるMITメディアラボは世界最高峰の研究教育機関ですが、女性の活躍は進んでいますか?

スプ子さん MITでもまだ途上ですよ。教授職の女性比率はまだ20%ですし。だから、積極的に女性登用を進めています。こういうことに対して「下駄を履かせるべきではない」という意見もあるけれど、私はどんどん履かせていいんじゃないかと思います。だって、今は能力をはかるものさし自体がこれまでの男社会で作られたもので、ものさしを変えたり多様化させないと、評価される女性も増えづらい。ものさしを変えるには、どんどん「ものさしを作っていく側」に女性を入れないと。結果的に若い人も増えることにもなって、とてもいいことだと思う。

羽生 政府が掲げている「202030(2020年までに指導的地位の女性を30%まで増やすという指針)」をどう達成できるものか、戸惑っている企業も少なくないようですが…。皆さんはどう見ていますか?