クールジャパンでなくて、実は超ホットジャパン
羽生 「クールジャパン」と言うけれど、実は日本は「熱い」のかもしれません。海外生活のご経験も豊富なスプ子さんから見て、日本の生活環境はいかがですか?
スプ子さん 今はボストンとニューヨークに住んでいて、ロンドンでも暮らしたことがありますが、東京が1番心地いいですね。サービスが行き届いて、環境がいい。ご飯もおいしい! これ、ほんとに重要です(笑)
小川さん いま僕の周りでベンチャー企業で成功した知人たちが続々海外移住していますが、やはり整備された環境と食は日本がいいと言っていますね。
昭恵さん 日本を出てしまう人がいるのはもったいないですね。その人たちはどうして外に出てしまうのかしら?
小川さん グローバルなビジネスを展開するために適した環境が日本の外にあるという理由は多いです。子どもがいる人は国際教育を受けさせたいという目的もあります。おっしゃるように優秀な人材の流出を止めるためにも、日本の魅力は何かと真剣に問わなければなりません。それには新しい視点も必要で、例えば、茶道のわびさびの世界は日本独自のものです。ノイズの多いIT社会の中でその価値は増していくはずで、日本だからこそ醸成できるその価値を、いまこそちゃんと訴求していくべきだと僕は考えています。
日本の伝統文化は根幹が強いから、多少遊んでも揺るがない
スプ子さん すごい可能性を秘めていると思います。私が今進めているプロジェクトの一つに、蚕を使った作品があるんです。蚕は糸を出して繭を作りますが、この生態ってまさに「生きるプリンター」なんですよね。最近の遺伝子組換えの技術でクラゲやサンゴの遺伝子を蚕に組み入れると、蛍光タンパク質で光る糸ができるんです。その光る糸を伝統的な西陣織に織り込んだ生地で、いま新作の主人公が着るドレスや靴を制作しているところなんです。
昭恵さん 光る絹糸? すごい!
スプさん とんでもない組み合わせのようだけど、日本の伝統文化って根幹が強いから、多少遊んでも揺るがないんですよね。どんなに遊んでも日本らしさは残る。それってすごい強みだなって思います。文化の歴史を見ても、日本はもともと「外から取り入れる」のが上手ですよね。仏教からカレーライスまで、外国から入った文化を見事に自分流にアレンジしてジャパナイズして。クリスマスもバレンタインもハロウィンも、日本独自のハイブリッド型で楽しんじゃう。
羽生 昭恵校長が挙げられた「協働する力」にも通じますね。
スプさん 私が次世代に伝えたい日本の強み、もう一つ、あります! 先日、ソフトバンクの感情認識パーソナルロボット「ペッパー」君のアプリケーションコンテストの審査をやらせていただいた時、あらためて感じたのは、日本人の“妄想力”ってすごいなと。ガンダムやエヴァンゲリオンのようなアニメの世界に出てきたようなロボットが現実に開発さてれ、妄想がテクノロジーの源になっている。さらに、そのロボットが介護の現場で役立ったりと、社会課題の解決にもつながっていく。妄想する力って、すごい可能性を秘めていると思います。
<第2回に続く>
(取材・文/宮本恵理子、写真/鈴木愛子)