子育てを母親だけに押しつけてはいけない。変えられるところから変えてみる

安田:では、ブログに1度書いたのがきっかけで、そこから取材をはじめられたんですね?

境さん:はい。ブログを読んだ方から、中には非難のメールもありましたが、多くの激励のメールが寄せられました。「これからもがんばってください!」と、今後を期待される内容も多くて……私は育児の専門家ではないので、それを少し重たいなと、感じたりもしました。
 でも、とある子育てに悩んでいるお母さんから、「ブログを読んで、私はこの子を産んで本当によかったんだな、と思いました」というメールをもらいまして。そこまで言ってもらえるなんて……。「今後もがんばってください」という声に、「自分は、なにか応えられるのかな?」と考えたんです。

 そこへ、以前の仕事仲間から、「私は今、母親同士が子をあずけあって、野外保育をしています」というメールをもらって……「自主保育・野毛風の子」という世田谷区の母親たちの取り組みを取材して、記事にしてみたんです。
 そしたら今度は「私は、共同保育をやってます」というメールをいただいて、川崎市にある「たつのこ共同保育所」へ、また取材に出かけて……。
 そうしていくうちにシリーズになって、今回1冊の本にまとめたというわけです。

安田:以前「ホリプロ保育園」にご来園いただいた、送迎・託児を顔見知り同士で頼り合う子育てシェア「AsMama」や、現役保育士さんが中心となって、子どもたちにより自由な遊びの場を提供している「asobi基地」なども、この本の中に出てきますが……「赤ちゃんにやさしい国にしよう」と、さまざまな取り組みをされている方がいるんですよね。

境さん:そうなんです。「子育てをお母さんひとりに押しつけてはいけない。社会みんなで、環境を作らなくては」ということをブログで書いたんですが、取材を重ねるうちに、すでにそういう活動に取り組んでいる人がたくさんいることがわかりました。

安田:取材される中でいちばん感じたことは、どんなことでしょうか?

境さん:「やり方はいろいろあるんだな」、ということですね。子育ての悩みや、待機児童の問題なんかも、もちろん解決すべきなんですが、一方で、「自分たち同士でやれることもある」という思いで活動している人が、たくさんいるんですよね。やろうと思った人と、それに賛同する人が何人かいれば、活動ははじめられる。「身のまわりでやれることは、あるんだな」、と感じています。

安田:1ママ、1保育士さんが声をあげて、そこに人が集まってきて……という形で、さまざまな草の根運動が行われていますものね。

境さん:今、ネットを使って活動がしやすくなっていますから、やれることはいっぱいあると思います。ツイッターでもブログでもいい、「こういうことできないかな?」と言ってみたら、ほかの誰かが「やってみたい!」と言うかもしれない。言わないとはじまらないし、見つからないので。
 世の中を変えるというのは、「政治家がいて制度を作る」ということも必要なんでしょうけど、10人で活動したら、それが100人に広がる。またそれが別の100人に伝わって変化が起きる。世の中を変えるって、そういうことだと思うんですよね。