重い非行に走りがちになる?

 ところで、ひと口に非行といっても、いろいろな罪があります。多くは万引きのような非侵入盗ですが、殺人のようなシリアスなものもあります。そこで、罪種ごとの出現率も出してみました。それぞれの罪の検挙・補導人員数を、表1のベース人口(a)で割った値です。図1は、世帯類型間の差を表す倍率を折れ線グラフにしたものです。

 どの罪種も、右上がりの傾向を呈しています。暴行や傷害などの粗暴犯は、直線的な増加傾向です。シリアスな凶悪犯(殺人、強盗、強姦、放火)の出現率は、母子世帯と父子世帯の間の断絶が大きくなっています。非行の多くを占める窃盗犯は、表1で見た全体的な非行率とほぼ同じです。量的に少ない知能犯や風俗犯では、家庭環境の差は相対的に小さくなっています。

 以上のデータから、親の有無によって非行の頻度はかなり異なること、シリアスな非行ほどその差は大きいこと、が分かりました。想像はしていましたが、このように数値で出てくると唖然とするものがあります。

 片方の親の不在と非行がどう関連するかですが、生活の主要な場である家庭において、情緒安定機能が十分に果たされないことが原因だとよく言われています。アメリカの社会学者のタルコット・パーソンズは「現代の核家族において、成員の情緒安定を図る表出的機能を担うのは母親」であると説いていますが、なるほど、母子世帯よりも父子世帯で非行少年出現率が高いことは、そのようなことを思わせます。

 片方の親の不在によって生活態度が不安定化した子どもが、心の空白を満たすべく盛り場などに繰り出し、何らかの非行誘発要因に遭遇した場合、当人が非行に傾斜する確率は高くなりがちとみることができるでしょう。