コミュニティー支援活動により居住者の交流が活発化

 サンシティや諏訪2丁目住宅では、居住者同士のコミュニティーがいわば自然発生的につくられていったといえる。だが、近年の分譲マンションでは入居前後にデベロッパーや管理会社が積極的にかかわり、民間のイベント支援会社などと提携してコミュニティーづくりをサポートする例が増えている。

 その一つが、埼玉県戸田市で2011年に竣工した総戸数923戸のグランシンフォニア戸田公園だ。入居から2年間にわたりデベロッパーが費用を負担し、支援会社のサポートで居住者向けのサークル活動やイベントが実施された。居住者による運営委員会も立ち上がり、月に1度は集まって相談するという。

 同マンションでのコミュニティー活動は今も続いており、夏祭りやクリスマスコンサートなどが定例行事として定着している。「サークルや教室がいくつかあるので、ヨガ教室に入りました。子どもが大きくなったら英会話教室に通わせたいです」「コンサートや避難訓練など、イベントが多いのでよく参加しています」といった住民の声も聞かれる。

グランシンフォニア戸田公園の夏祭りには、毎年多くの居住者が参加する
グランシンフォニア戸田公園の夏祭りには、毎年多くの居住者が参加する

 マンションというと一昔前はプライバシーを重視し、隣近所とはあまり付き合わずに暮らせるイメージが強かった。だが実際には大規模マンションを中心に、住民による自発的な交流が実現しているケースもある。また東日本大震災を契機にコミュニティーが見直され、入居前後から居住者同士の交流に力を入れるデベロッパーも増えてきた。最近では都心のタワーマンションでもコミュニティ形成をサポートする例が出てきており、こうした流れは今後も広がりそうだ。

 だが、課題もある。マンションには隣近所との濃密な付き合いを好まない人も依然として少なくないため、コミュニティー重視派といかに“共存”していくかが難しい。コミュニティー活動が単なるお楽しみだけでなく、災害時の安心感を高めたり、管理への関心を強めることで資産価値の維持や向上にも直結することを、多くの居住者に理解してもらう取り組みも必要だろう。

 異なる世代間の交流も促す必要がある。マンション新築時は子育て世代の比率が高く、同じ悩みを抱える居住者同士が仲良くなるケースが多い。だが年月の経過とともにシニア世代が増えたり、都心部などでは新築当初から高齢者世帯や若い単身世帯の比率が高めな場合もある。

 こうした多世代のコミュニティーづくりの実例として、サンシティでは夏祭りなどを利用して子ども向けの工作教室などを開き、居住者サークルのシニア会員が先生となって教えるといった取り組みを続けている。同マンションでは居住者の世代交代も進んでおり、子ども時代にマンションで育った世代が戻ってきて親世帯と“近居”するケースなどが増えているという。

 DUAL世代がこれからマンションを選ぶときは、すでにコミュニティーが形成されているのか、あるいはデベロッパーがサポートに力を入れてくれるのか、といった点をチェックするといいかもしれない。

(文/大森広司、写真/武田光司)