良好なコミュニティーが大規模団地の建て替えを可能に!

 共働き世帯は子どもを留守番させておくことが多くなりがち。近隣住民との関係や地域コミュニティーは、住宅選びのポイントの一つだろう。

 マンションなら、建て替え時にも重要になる。例えば東京都多摩市の諏訪2丁目住宅は、サンシティよりもさらに古く1971年に建築・分譲された総戸数640戸の“公団団地”だ。その団地が「マンション建替え円滑化法」に基づく建て替え工事により、2013年10月にBrillia多摩ニュータウンとして生まれ変わった。法律では全体の5分の4以上の賛成多数があれば建て替えが可能とされているが、これだけの規模のマンションで8割以上の賛成を得るのは簡単ではない。

 建て替え事業成功の背景にあったのが、良好なコミュニティーの存在だったと言われる。団地ができた当時はまだ周辺に商業施設などがほとんどなく、鉄道も通っていなかったため、住民には「自分達の街を自分達で創る」という意識が強かったようだ。管理は業者任せにせず自主管理としたのも、そうした意識の現れだろう。建て替えのプロセスでも管理組合の理事会が中心となって勉強会や集会を頻繁に開き、少数意見にも耳を傾けるといった地道な努力を積み重ねた。

 そうした取り組みのかいもあり、建て替え後は旧住民の9割近い世帯が戻ってきたという。「昔からの住民と、新しくマンションを買った住民とが仲良く交流できるよう、管理組合がサークル活動やイベントなどをサポートしている」と話すのは、建替組合の理事長を努めたマンション居住者の加藤輝雄さんだ。管理組合には住民交流推進委員会がつくられ、子育て交流会やみどりの観察会といった交流イベントが行われている。

建て替えられたBrillia多摩ニュータウンには、敷地内に保育所や児童館など子育て施設のほか、高齢者支援施設も設置されている
建て替えられたBrillia多摩ニュータウンには、敷地内に保育所や児童館など子育て施設のほか、高齢者支援施設も設置されている