「タイ児童買春でエイズに 12歳で売られ亡くなった女の子」に引き続き、長期ファンドを運用するコモンズ投信(東京・千代田区)会長の渋澤健さんの新連載「渋澤 健 チェンジメーカー7つの感情」、第4回です。「日本資本主義の父」と言われる渋澤栄一氏の孫の孫でもあり、長期的な視野で世界を洞察する傍ら、共働きで3児(14歳、13歳、11歳の男児)の父親でもある渋澤さん。この連載で取り上げるのは、儒教の経書「礼記(らいき)」にある「七情(しちじょう)」。七情とは、「喜・怒・哀・楽・愛・悪(お)・欲」という7つの感情を指します。毎回、ゲストの方にご登場いただき、共働き夫婦が生活や仕事のなかで巡り合う七情について深く考察していきます。今回のゲストは一橋大学大学院商学研究科教授のクリスティーナ・アメージャンさん。取り上げる感情は「楽」です。

クリスティーナ・アメージャン
一橋大学大学院商学研究科 教授

2012年4月から現職。2001年から一橋大学大学院で教鞭を執り、現在、組織行動やリーダーシップ、経営、コーポレート・ガバナンスなどを教える。専門研究テーマは、コーポレート・ガバナンスや、東アジアおよび欧州、米国の資本主義の比較制度、日本企業の様相変化など。ハーバード大学卒業、スタンフォード大学ビジネス・スクール経営学修士課程修了、カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネス博士課程修了。コロンビア大学ビジネス・スクール助教授を経て、一橋大学大学院国際企業戦略研究科の教授となる。ベイン・アンド・カンパニーと三菱電機において勤務経験を持つ。現在、三菱重工業株式会社、株式会社日本取引所グループの社外取締役を務める傍ら、数多くの日本企業や多国籍企業に対する研修やコンサルティングも行う。「American Sociological Review」など、国際的専門誌への掲載論文を多数執筆。スウェーデンのウプサラ生まれであるものの、国籍は米国。日本在住17年。母国語である英語と同様、日本語、中国語を話す。

一橋大学で出会った明るい女性は、投資先の社外取締役の“重鎮”だった

 にこにこしている笑顔が印象的でした。

 1年ぐらい前、講師として招かれた一橋大学商学部のセミナー会場で、私は“モノトーン”な表情の若い学生諸君に囲まれていました。そこに、一人だけ“豊かな色彩”を感じさせる外国人女性が、明るくその存在感を発していました。

 講義終了後、私のところに近づいて“I really enjoyed your talk.”と明るく声を掛けてくれた彼女は、私と同年代ぐらいでしょうか。会場を仕切っている様子を見て、「あ、そうか。この人は大学の教授なんだ」ということに気づきました。

 学生達とのピザとソフトドリンクでの懇親会の後、国立キャンパスから近所のお店へ場を移し、ビールとソーセージをつまみながら、今度は教授陣との“大人の時間”の打ち上げ会。他の教授から、クリスと呼ばれている女性はおいしそうにビールを飲み、楽しい談話をにぎやかに盛り立てていました。

 翌日、前夜の楽しい余韻にふけっていると、ふと気づきました。クリスティーナ・アメージャンさん。彼女が、コモンズ30ファンドの投資先であるエーザイの外国人社外取締役と同人物であったことを。現在は、日本取引所グループ、三菱重工業など、エスタブリッシュメント系株式会社の社外取締役を務められているガバナンスの重鎮の大学教授。そのような堅そうな仕事を持つ女性でありながら、楽しく会話できる気さくな人。このかけ離れたイメージに興味をそそられました。

 その後、一橋大学商学部が新設した教育プログラム「渋沢スカラープログラム」のアドバイザリーボードに私が就任することになり、さらにお会いする機会が増え、また、フェイスブックでのつながりを通じて、クリスさんの楽しいお人柄にますます魅了されるようになりました。7つの情の一つで、今回のテーマである「楽」。このキーワードで、どのような日本社会がクリスさんの目に映っているのか。東京丸の内のカフェレストランでお話を伺いました。

クリスティーナ・アメージャンさん
クリスティーナ・アメージャンさん