前例主義に縛られ、新しい価値観を取り込まない「ojisans」の存在

 もともと子どもは「楽しいスイッチがオンの状態」で産まれてきます。そのスイッチがオフになった状態の若者へと育つのは、親の姿勢や子どもが置かれる環境に課題があるからでしょう。その課題で、一番厄介なのは、今までの「成功体験」でありましょう。

 楽しいスイッチをオンにしなければならない場面で、職場でも自らのスイッチだけではなく他者のスイッチをオンにすることまで阻害する存在もいます。それが、クリスさんのお言葉をお借りすれば、「ojisans(オジサンズ)」という、組織の上中間管理職のようです。そういった人達の、「次のポスト配置に支障を来す可能性がある組織リスクを取りたくないために、前例主義に縛られ、新しい価値観を取り込む意気が欠けている姿勢」が非常に気になるようです。

 一方、“But, I love ojiisans.”とクリスさんは、年配者の経験と功績には敬意を払ってもいます。「本当に素晴らしい。戦後のほとんど何も残されなかった状態から、現代日本をつくりあげた世代だから」と指摘されます。「誠実で、忠実で、インテグリティー(主体性ある行動指針)があり」そして、「一緒に飲むと楽しい」と言います。日本の先駆的な経営トップは、グローバル的視野があり、女性の活躍などダイバーシティー経営への理解もある。一方、その真逆の「オジサン型」経営者も少なくない。社外取締役を務める外国人経営学者の視座から、そんな日本企業の実像が浮かび上がってきました。

 最後に、クリスさんに日本の生活についてお伺いしました。「日本で生活ができて楽しい。安全だし、食べ物はおいしいし、そして、多様性ある友達付き合いが本当に楽しい」と、日常を満喫しているようです。5~6年ぐらい前に、クリスさんは「ダンスが下手だったので」とレッスンを始めました。社交ダンスと思いきや、実は、ベリーダンスだとのこと。“Just to have fun.”という理由で。

 以前、クリスさんのフェイスブックのタイムラインで拝見しました。ベリーダンス発表会の前に、自宅で撮られたご自身の化粧姿。「これから山手線に乗ります!」とルンルン気分の書き込み。「ojisans」達を熱狂させたかどうか、その後の書き込みでは、分かりませんでしたが……。