連載「黒田優佳子先生の 優しい生殖医療講座」第2回です。不妊治療専門施設の黒田インターナショナル メディカル リプロダクション(東京都中央区)院長の黒田優佳子先生は、ご自身、中学校に通うお嬢さんをお持ちの共働きママです。「学校でも性教育の授業はありますが、本来であれば性に関する大事な話は、家庭の中で教えていただきたいのです」と語ります。どんな言葉でどのように伝えればいいか、ヒントを教えていただきました。

子どもの誕生が夫婦の“愛の結晶”であることを正面から教える

黒田優佳子先生
黒田優佳子先生

DUAL編集部 家庭で子どもに性について教えることの大切さ。それは分かっていても、いざ実践しようとすると難しいです。子どもに性に関する話をするときは、どのような伝え方をすればよいのか、アドバイスを頂けますか?

黒田先生(以下、敬称略) はい、家庭内での性教育はとてもとても大切なものです。私も、産婦人科医として専門の不妊治療に取り組む中で、お子さんにとっての人生初となる性教育の重要性を感じています。

 まず最初に、具体的な性教育に入る前段階、つまり、幼稚園から小学校低学年までの間に、特に女の子には お父様とお風呂に入る機会を生活習慣の中に取り入れていただきたいのです。自然と「女性と男性の生殖器は違うんだ」ということをインプットさせるのです。どのご家庭でもお父様はお忙しく、帰宅が遅くなりがちですが、日曜日の夜だけでもお嬢様と一緒にお風呂に入るようにするのも大事なことです。

 そして、最もお子さんに伝えていただきたいことは、お子さんがお父さんとお母さんの“愛の結晶”として生まれてきた、というメッセージです。

 子どもは男女がセックスをしないと産まれません。セックスは「愛を育む一つの形」であると説明することが大事なんです。夫婦愛し合って子どもを持つ経験をしている親が、セックスとはどういうことなのかを、お子さんに直接説明することに意義があります。

 「動物的だと思われるかもしれない。でも、人間も哺乳動物なんだから、そういう行為がなければあなたは産まれないのよ」と、“人間の生殖の原点”について、お母様がお嬢様に、お父様がご子息にお話しするというのがいい方法だと私は思います。性について話ができるというのは、オープンですてきな親子関係です。

性について、小学校高学年くらいまでには親子で話そう

―― 性に関して、子どもに話すべきタイミングというものはあるのでしょうか?

黒田 思春期・反抗期に入る前、つまり、性に関する興味を持ち始める小学校高学年くらいにはお話ししておいたほうがいいでしょう。比較的、女の子のほうが男の子より精神面の成長は早いですね。でも、個人差がとても大きいので、お子さんをよく観察して、適した時期をご判断ください。

 食事が良くなったこともあり、最近の子ども達の成熟は早まっています。女の子であれば、小学1年生、2年生で初潮を迎える子もいます。小学校の5~6年生にもなると、学校によっては8割、9割が初潮を迎えていると言ってもいいでしょう。できれば、初潮を迎える前に、お母様の口から性についてしっかりお話ししてほしいのです。

 初潮になるときの症状もそのお子さんそれぞれです。最初におしるしのようなものがあって、数カ月かかって本来の月経が訪れるようになる子もいますし、最初から規則的に月経が来る子もいます。最初は出血量も時期もイレギュラーで、徐々に安定してくる子もいます。

 男の子に伝える時期は、意識と関係なくペニスが勃起してくるようになったころ。成熟すると「朝立ち」といって、朝ペニスが大きくなっておねしょしたみたいにパンツがぬれることがあります。まだ精神的に幼い子であれば「ママ、おねしょしちゃったみたい。パンツがぬれちゃった」と言ってきたりするので、親のほうも認識できますが、精神的に成熟している子は大人に対して隠してしまうかもしれません。例えば、自分でパンツをゴミ箱に捨ててしまうかもしれない。ですから、細かいと思われるかもしれませんが、パンツの枚数を親のほうで管理しておくといった気遣いも必要になってきます。