部下が保育園から呼び出しされた!あなたならどうする?
× <ダメボスの対応>
部下A( 保育園からの電話を受け取って)もしもし、はい…熱ですか。できるだけ早く行きます。失礼します。(電話を切って)部長…あの…。
上司 また子どもの熱ですか。今月に入って何度目だっけ? よりによってこんな忙しいときにねぇ。
部下A 本当にすみません…。どうしても迎えに行かなければならなくて申し訳ありません。
上司 しょうがないけど、周りには迷惑かけるなよ。今日は帰ってもいいけれど、言っといた仕事、期日までに確実に上げろよ。
部下A はい、承知しました。申し訳ありません(泣きそうな顔)。お先に失礼します。
上司 はい、お疲れさん。
〇 <イクボスの対応>
部下A( 保育園からの電話を受け取って)もしもし、はい…熱ですか。できるだけ早く行きます。失礼します。
上司 どうした? 子どもの熱?
部下A そうなんです。
上司 ああ、今はやっているからね。心配だね。すぐ迎えに行ってあげな。
部下A すみません。引き継ぎを…。
上司 了解。どこまで進んでいる?
部下A (やりかけの仕事を見せながら)急ぎの案件が1件あって、残りは今週中に仕上げればいいものなんですが…。いつも申し訳ありません。
上司 別に謝ることじゃない。子どもが大きくなれば熱での呼び出しも減るし、今は大事な時期だから。その1件はメールで共有して俺が送っとくよ。安心して迎えに行って。
部下A どうもありがとうございます! では、お先に失礼します。
上司 はい、お疲れさま。気を付けて。
問題のある「ダメボスの対応」と模範的な「イクボスの対応」、大きな違いは3つあります。
1つは、部下の事情に寄り添っているか。毎日保育園のお迎えがある、急な発熱で呼び出されるといった事情は、本人の意志ではどうすることもできない制限事項です。そのことに理解を示さずに無理を強いることは本人を傷つけ、仕事の意欲をそぐほどのダメージにもつながります。罪悪感が募った結果、部下がメンタルを病んでしまった場合は、管理上の問題も生じます。
仕事に打ち込みたくてもできないジレンマは部下自身が痛切に感じていると理解し、受け入れる言葉をかけることが、信頼関係を築きます。
2つ目のポイントは、欠員が生じた緊急時に上司が率先してチームでフォローする体制をつくろうとする姿勢です。「自分で何とかしろ」という個人プレーに頼る方法では限界があり、仕事が回らなくなり、そのツケは管理職に突き付けられます。フォロー可能なメンバーをすぐに招集し、分担を指示する行動力が部下の安心にもつながります。
3つ目は、事前の情報収集です。部下の子どもが発熱したと聞いて、「はやっているからね」と返せる上司は、季節ごとに子どもがかかりやすい感染症の情報を事前に仕入れているということです。「乳幼児を抱える部員はそろそろ休みがちになるかもしれない」という前提で業務分担を組み立てておけば、いざというときも「想定内」として対応できます。
上司自らが率先して制約のある部下への理解・協力の姿勢を示していくと、部下も「明日からまた頑張ろう」という意欲とロイヤルティーが向上します。また、他のメンバーに対しては「困ったときはお互いさま。次は君たちの番」というメッセージを発信することで、総合的にチームの結束力が高まっていくのです。
特に、時短勤務者を抱える組織では、勤務体系や給与の仕組みを他のメンバーが理解していないケースが多いようです。互いに誤解のないよう、周知させることがチーム内の不協和音を防ぐことにもつながります。
(監修:東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス推進部シニアコンサルタント 塚越学さん)
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