根拠のない3歳児神話に振り回されて「親が一秒でも長く一緒にいてやることが健全な子供の育成には不可欠」と信じてしまうと、共働き家庭は追い詰められてしまう。私も最初に長男を預けた時の罪悪感と寂しさったらなかった。育休からの復帰を控えた知人が、保育園通いを始めるのを前に不安そうな顔をしているのをみると、親子丸ごと抱きしめたくなる。

とにかく「一家4人で生きていければいい」が目標に!

 私も何度も「私が働いているのは悪いことなんじゃないか」「ひどいことをしているんじゃないか」って思った。誰がどんな風に励ましてくれても「きっと子供は寂しい思いをしている」「夫も内心迷惑している」っていうささやき声が、気弱になるとすぐに聞こえてきた。目の前にいる家族の顔じゃなくて、「世間」とか「他のお母さん」という、実体のないイメージが私を苦しめていたのだ。その心境に変化が現れたのは、次男を産んで0歳児保育に預けた頃からだったろうか。

 もう、悩む余裕がなくなったのだ。3カ月と3歳の息子がいて、しかも当時私は不安障害の治療中で、仕事にも復帰し、夫も忙しかった。これでいいのか? じゃなくて、これが現実!! って追い込まれて「とにかく一家4人で生きていければいい」と一気に育児目標のハードルが下がった。だから保育園は本当にありがたかったし、先生たちがみんな天使に見えた。家事も育児も仕事も手いっぱいで、夜中にボロボロになった夫と二人で「これ、あと何年続くのかなあ。うちにオクサンがいたらいいのにねえ」と何度も嘆きあった。あと一人、家事専業の誰かがいてくれたら、こんなに追い詰められることなくうまく回せるだろうに・・・と夢想していたのだ。