「天使の歌声」として知られるウィーン少年合唱団が生まれたのは1498年。当時のオーストリア皇帝マクシミリアン1世の命により編成された少年聖歌隊が始まりです。1918年、第一次世界大戦でのオーストリア=ハンガリー帝国敗北を機に解散しますが、ヨーゼフ・シュニット神父が私財を投じて民営のウィーン少年合唱団に生まれ変わります。ここから幅広い層を対象にコンサートを行うようになりました。日本を初めて訪れたのは1955年。今年2015年4月26日から始まる公演は、来日60周年を記念する公演になるわけです。

 ウィーン少年合唱団に所属するのは、10歳から14歳の約100名。全員、ウィーンにあるアウガルテン宮殿で生活し、ハイドン、モーツァルト、シューベルト、ブルックナーという合唱団にゆかりのある作曲家の名がついた4つのグループに分かれて活動しています。その中には日本人の団員もいるそうです。

 現在、合唱団の芸術監督を務めるのはゲラルト・ヴィルトさん。ヴィルトさんご自身も子どもの頃、ウィーン少年合唱団に所属しており、お子さんもウィーン少年合唱団で活動していました。世界中から集まる子どもたちを長年見続けてきたヴィルトさんに、ウィーン少年合唱団の魅力、そして音楽教育に大切なことについて聞きました。

ウィーン少年合唱団の芸術監督ヴィルトさんは自身もウィーン少年合唱団に所属していた<br>(写真/www.lukasbeck.com) 
ウィーン少年合唱団の芸術監督ヴィルトさんは自身もウィーン少年合唱団に所属していた
(写真/www.lukasbeck.com) 

素晴らしかったウィーン少年合唱団の日々

──ヴィルトさんはご自身もウィーン少年合唱団の卒業生だそうですが、どういう経緯で入団したんですか? 自分の意志で入ったんですか?

 もちろん。私は自分の意志で、ウィーン少年合唱団に入りました。

 私は上オーストリア州の田園地方で育ったのですが、ウィーン少年合唱団に入るという考えは、学校の先生から教えられたのです。そこで2人でウィーンに行き、オーディションを受け、合格したのです。

──ウィーン少年合唱団の生活は楽しかったですか?

 団員生活はすばらしいものでした。元々歌うことは大好きでしたし、オペラで演技するのもとても面白い体験でした。

 広い宮殿の中で少年たちと集団生活するのも楽しかった。遊びたいと思ったときも、一緒に音楽を合奏したいと思ったときも、相手はいつでもいるのですからね。

 旅行も、大勢の人の前で歌うことも、すばらしいアーティストたちと共演することも、とても気に入っていました。

──特に印象に残っていることは?

 特別な経験のひとつを挙げるとしたら、伝説的な指揮者であるカール・ベームと共演したコンサートです。そのときの経験すべてがエキサイティングでスリリングでした。こういう子ども時代は、すばらしい思い出になります。

ウィーン少年合唱団に所属するのは10歳から14歳の約100名。中には日本の子どももいる(写真/www.lukasbeck.com) 
ウィーン少年合唱団に所属するのは10歳から14歳の約100名。中には日本の子どももいる(写真/www.lukasbeck.com)