子どもには学ぶのをやめないでほしい

──ぜひヴィルト家の音楽教育についても教えてください。

 私には6人の子どもがおり、家庭には常に音楽があります。

 子どもたちは全員楽器演奏を楽しんでいます。フレンチホルン、ピアノ、チェロ、トランペット、ギターなど楽器は様々ですが。私たちは一緒に歌い、合奏します。子どもたちはそういう体験に囲まれ、音楽と共に大きくなります。

──ヴィルトさんの子どももウィーン少年合唱団に入っているそうですが、自分の子どもを入れようと思った理由は?

 もちろん、子どもたちがウィーン少年合唱団で歌うかもしれないという考えは、いつも私たちの家族の中にありました。でも、親が促したのではありません。子どもたちが「やりたい」と言ったので、その道へ進ませたのです。良い経験になることは分かっていますから。実際、子どもたちも皆、ウィーン少年合唱団での生活を楽しみました。

 楽しみ方は明らかにひとりひとり別の形でしたが、これは子どもはそれぞれ違いますから、驚くことではありません。一人はザルツブルク音楽祭で歌い、他の二人は映画に出ました。

 一番下の子は、「日本への架け橋」コンサート(東日本大震災直後の4月にウィーンのシュタットハレで開催されたチャリティコンサート)に参加したのですが、「こんな貴重な瞬間に合唱団にいられてとてもうれしい」と私に言いました。そのときは、4つのコーア全部がひとつのコンサートで一緒に歌ったのです(コーアはグループのこと。ウィーン少年合唱団は4つのコーアに分かれ、通常は別々に活動している。4つのコーアが一緒に歌ったのはこの時が唯一)。あれはあの子にとって特別なことでした。親としても忘れられない思い出です。

ウィーン少年合唱団が暮らす宿舎、アウガルテン宮殿にて(写真/www.lukasbeck.com)
ウィーン少年合唱団が暮らす宿舎、アウガルテン宮殿にて(写真/www.lukasbeck.com)

──子どもをウィーン少年合唱団に入れてよかったことは?

 一流の音楽教育が受けられることです。もし音楽に興味があるなら、ウィーン少年合唱団は最高の場所のひとつです。私の末の息子は今もこの学校に通っています。ウィーン少年合唱団の高校コースに通っているのです。

──音楽に限らず、子どもの教育で心がけていること、気をつけていることは?

 私は子どもたちに幅広い良い教育を受けさせたいと思っていましたし、今も思っています。そして決して学ぶことをやめてほしくないと考えています。

 何よりも、子どもたちには幸せでいてほしい、人生において自分の場所を見つけられる、バランスの取れた個人になってほしいと願っています。そうなれば、他人と協調できるようになるでしょうし、周囲に貢献することもできるでしょう。

──子育てで苦労した点は何でしょう?

 子育ては必ずしも簡単ではありませんが、大きな喜びであり、神聖な贈り物です。

 親なら誰でも、子どもに対してとても大きな責任があることを知っているでしょう。子どもに技術や知識、感情の許容量などを身につけさせる必要があるのですから。

 でも、私たちの子はとてものんきな子どもたちなんです。妻と私はとても幸運ですね。

──奥様との家事、育児の役割分担について教えていただけますか?

 私たちはできるかぎり責任と家事を分担するようにしています。私達は土地と家畜を含む農場を持っているので、結構な量の仕事があるんです。妻はまったく驚くべき人で、彼女のサポートなしには私は今のような仕事をすることはできなかったでしょう。そして妻とはチャンスがあればできるだけ一緒に旅行するようにしています。