OECD(経済協力開発機構)が実施する生徒の学習到達度調査「PISA」で2003年に1位をとり、2014年にはセーブ・ザ・チルドレンによる「お母さんにやさしい国ランキング」で1位に選ばれたフィンランド。詰め込み型とは真逆の、ゆったりと個性を育むこの国の教育は、赤ちゃんのころから社会で子どもを温かく包む環境から生まれているようです。
 そんなフィンランドの首都・ヘルシンキに8年住んだ後、日本に帰国したワーキングマザーの安藤由紀子さんに、現地での育児体験を通して見えてきたことを4回にわたってリポートしてもらいます。第1回は、残業を一切せず、夏休みは家族でゆったりと過ごすフィンランド人の流儀について紹介します。

私がフィンランドで暮らすことになった理由

自然といつも近いフィンランドの暮らし。こちらは夏休みを過ごす森の中
自然といつも近いフィンランドの暮らし。こちらは夏休みを過ごす森の中

 初めまして。安藤由紀子です。私がフィンランドの建築設計事務所に勤務することを決め、単身でヘルシンキに向かったのは2006年の春のこと。それ以前は、日本で意匠系の建築設計事務所に勤務していました。

 そろそろ事務所を移るか、今後のキャリアをどうしようかと考えていたころ、上司から「ヘルシンキの建築設計事務所に勤務できるかもしれない」という話を聞いたため手を挙げました。当時の上司である建築家が日本フィンランドデザイン協会とつながりがあったのです。

 「1年もしくは2年ほど海外で経験を積みたい」と考え渡欧したのですが、想像以上に居心地がよく、3年、4年とあっという間に時は流れていきました

 やがて、同じく建築家のドイツ人男性と結婚し、その後2011年にヘルシンキで長男を出産。そして昨年、8年間過ごしたヘルシンキを離れて帰国しました。

 フィンランドは最初の数年間は一人暮らし、その後は二人暮らし、そして最後の3年ほどは家族3人の生活と、私にとって人生の転機を過ごした国となりました。