陸上自衛隊初の心理幹部として16年にわたって、うつ、自殺、あるいは悲惨な出来事にさらされた隊員やその家族に対する心のケアを専門に行ってきたメンタル・レスキュー・インストラクター、下園壮太さん。このコラムでは、小学生の子どもとその親の親子関係について、下園さんのアドバイスをシリーズでお届けします。2015年1月25日に中目黒スクエア(目黒区)で開催された、目黒区における学童保育や子育てについて交流を深める「目黒区学童保育研究集会 第30回子育てのつどい」の記念講演、下園壮太さんによる「子どもも大人も元気ハツラツ~子育てMR(メンタルレスキュー)」の内容をもとに編集しています。これまでの記事は、1回目「下園壮太 親は金八先生になれなくてもいい」、2回「疲れたら、旅行やテーマパークは避ける」です。

「疲労」は「怒り」を2倍、3倍に膨らませてしまう

 前回では、年齢とともに職場でも責任が増し、同時に子育てで日々エネルギーを消耗するDUAL世代は知らず知らずのうちに疲労をためやすい、というお話をしました。

なぜ私達DUAL世代は、疲労に注意しないといけないのでしょう。

 

 疲労は、怒りという感情を2倍、3倍と拡大させる性質を持っているからです。疲れている状態というのは、エネルギーがとても少ない状態です。怒りを抑えるにはエネルギーが必要。しかしそのエネルギーが足りないから、ふとわき起こった怒りを制御するのが大変難しくなるのです。

 親子は対立しあうものだし、これから思春期を迎える子どもはどんどん親に反抗してくる。それは当たり前のことと受け止めるとして、子どもの態度にいちいち怒りを爆発させていると、ますます自分の落ち込みは増し、うつっぽくなってくることもあります。

 まだまだ続いていく子育て期を強い気持ちでやっていくためには、「疲労のコントロール」とともに「怒りのコントロール」もしっかり行うことが必要です。

 私は自衛隊で、隊員達にメンタルトレーニングを行う上で、「感情への接し方」という練習を行っています。しかし、「不安」と「怒り」、この2つの感情への対処はけっこう難しく、なかでも「怒り」という感情への対処はトップクラスに難しいのです。怒りに乗っ取られると、人はなかなか冷静にはなれないもの。だからこそ、怒りをおさめる練習が有効なのです。

怒りの感情は体と心を乗っ取ってしまう

 そもそも怒りとはどういう感情なのでしょう。