「家族は仲良しであるべき」という思い込みが強すぎる
下園壮太さんは、陸上自衛隊初の心理幹部として16年にわたって、うつ、自殺、あるいは悲惨な出来事にさらされた隊員やその家族に対する心のケアを専門に行ってきたメンタル・レスキュー・インストラクターです。
下園さんによると、学童期は子どもが親の保護から自立し、自分の価値観で歩み始める時期。だからこそ、子どもは、自分をコントロールしようとしてくる親に苛立ちがち。一方、親のほうも、親心からのアドバイスに耳を貸さなかったり口答えする子どもに腹を立て、いさかいが増えてきます。
また、4月のこの時期は新学期が始まり、職場の異動があるなど、親も子も新たな環境に身を置き、知らず知らずのうちに疲労を重ねがち。実は疲れは「怒り」のスイッチを入りやすくする、という特徴もあります。
手を広げれば抱きついてきてくれた就学前の時期とは異なり、あらたな心構えで子どもとのつきあいを考えるべきタイミング。私たちはどんなふうに子どもを見つめていけばいいのでしょう? シリーズでお届けします。
親と子はぶつかりあって当たり前
親子は常に仲良しであるべき、子どもは親に何でも話してくれるべき……そんなふうに皆さんは思っていないでしょうか。
でも、現実には子どもはお父さん、お母さんを超えていかなくてはなりません。生まれたときは脆弱で自分で食事をとることすらできない赤ちゃんだったとしても、子どもは成長していく。親は自分よりも先に死んでしまう存在ですから、自力で生活していくために、どんな子どもにも「親を乗り越える」という「自立欲求」が備わっています。
だからこそ、小学校に上がると「たとえ正しくても親が言うことにはとにかく従いたくない」という時期がやってきます。だいたい、小学校3年生ぐらいから、子どもはどんどん親に反発するようになります。「くそばばあ」なんて言われてショックを受けると思いますが、「うん。順調に育ってる」とおおらかに受け止めるたくましさも必要です。