共働き世帯にとって保育園や学童保育クラブの運営など、子育て支援を担う自治体は頼りになる存在であってほしいもの。このたび日経DUALでは、読者に代わって、自治体の首長への突撃インタビューを開始しました。最初は東京23区に取材を依頼し、区長に質問をぶつけます。

今回は、全国初の公立小中一貫校、保育園・幼稚園・小学校の連携など、子育て・教育分野のユニークな取り組みが注目されている品川区。後編では、供給することが新たな需要を呼んでしまう待機児童問題、品川区が特に力を入れる小学生からの英語教育、体験型の経済教室と、全児童放課後等対策事業「すまいるスクール」について語ってもらいます。

濱野 健 区長

1947年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。大学卒業後、73年から品川区役所勤務。91年品川区総務部職員課長、99年同企画部長、2000年品川区助役となり、2006年品川区長初当選。2010年再選、2014年再々選を果たし現在3期目。

待機児童減が、新たな需要を呼ぶ。2015年度は709人の定員増

濱野健・品川区長
濱野健・品川区長

DUAL編集部 品川区の保育園・待機児童問題の現状を教えてください。

濱野区長(以下、敬称略) 保育園の待機児童数は、2013年度は62人だったのですが、2014年は128人と増えてしまっています。保育施設はつくっているのですが、なかなか追い付きません。2015年度は受け入れ枠を709人分、拡大していく予定です。

 待機児童問題は、待機児童が減ると区外からの人口流入などで、また増えてしまうというふうに、供給が需要を呼ぶ面があります。区のウェブサイト経由で届く区長宛のEメールに「待機児童が減っているようだから品川区に転入したのに保育園に入れなかった。引っ越し費用を弁償してほしい」といったメールを頂いたこともあります。それに対しては「待機児童を減らすよう努力します」という返信をするしかなくつらかったですね。

 どこの区も同じだと思いますが、一定の敷地があるとそこは大規模マンションになりやすいのです。かつては、工場跡地などは区が購入して、特別養護老人ホームにするケースが多かったのですが、現在では大規模マンションとしての需要があり、デベロッパーが付ける値段も桁外れです。役所には財産価格審議会というものがあり、土地の売買の適正価格が決まっているため、そもそも競りに参加することさえ難しい。

―― 増やそうとしているのは、私立の保育施設でしょうか?

濱野 ある時期までは区立が圧倒的に多かったのですが、ここ数年は私立の保育施設の件数が多くなっています。私立にも参入してもらい、公私立の総合的な力で、待機児童問題を乗り切りたいと考えています。

 大規模マンションの中に認可保育所を併設する、という試みも行っています。区内の国有地を国から買い、それを私立保育施設に貸して、保育施設を新設する取り組みもしています。

 品川区では、区内で認証保育施設をつくる場合、土地を買ったり借りたりする際の補助を設けています。保護者に対しては、認可保育園と認証保育園で差が出ないように、差額を区が支給しています。今では行っている区も多いのですが、品川区が最初に始めたものです。こうした取り組みを業者に対するインセンティブとして、品川区内での認証保育施設を増やしていこうという計画です。