忙しい日常から離れる旅で、子どもの「なぜ?」に向き合いたい

 旅先では、自然や文化・歴史など、様々な「本物」に出合うことができ、この出合いこそが旅育の醍醐味と言えます。この旅先での本物体験は、日常の学びと双方向的に作用します。前回までに述べた通り、机上で学んだことを実際に旅先で見ることで知識が深まり、学びのモチベーションUPにつながります。

 逆に、旅先では親も気持ちに余裕ができるため、日常では気が付かないわが子の興味や関心を発見し、育てる良い機会になります。興味・関心の芽は、子どもの「なぜ?」「何だろう?」という疑問の形で表れることが多いので、シグナルをキャッチして大事に育てたいもの。また親も積極的に感動や疑問を子どもと分かち合うことが重要です

佐賀県の吉野ケ里歴史公園では火おこしのほか、土笛や勾玉作りなどを体験できる
佐賀県の吉野ケ里歴史公園では火おこしのほか、土笛や勾玉作りなどを体験できる

 息子が小学生になって間もないころ、新潟を訪れました。そこで黒い羽根を持つ蛍光色のトンボのような昆虫を発見!

 息子「面白いトンボだ~。なんていう名前だろう?」
 夫「トンボにしてはちょっと飛び方が変わっているね。カゲロウかな?」
 私「カゲロウってこんなのだっけ(あなた知っているの?)」
 夫「……」

という会話の後、その昆虫の写真を撮っておいて、自宅に帰ってから調べようということになりました。

 インターネットで調べると「ハグロトンボ」らしいことが分かりました。水のきれいな清流にしか生息しないトンボらしく、そのことから、「あの川はきれいできっと魚もたくさんいるね」「そういえば釣りをしていた人もいたよね」「何が釣れるのかな?」と関心はどんどん広がります。

 私もそうでしたが、忙しい日常では、子どもの「なぜ? 何?」にしっかりと向き合うのが難しいときもあります。旅ではいつもと違う世界に触れ、子どもの好奇心はパワー全開。ぜひ子どもが納得するまで、「なぜ? 何?」に付き合ってみてください。学び知ることの楽しみ、分からない未知のものを追求する姿勢を学ぶことは、将来にわたり子どもの力となるはずです。

名前が分からなかった黒い羽根のトンボ。旅では子どもの「何だろう?」にとことん付き合って
名前が分からなかった黒い羽根のトンボ。旅では子どもの「何だろう?」にとことん付き合って