子どもには小さなころからクラシックなど、多様な音楽に親しんでほしい。でも、クラシックのコンサートへ行ったことがないのでどうすればいいのか分からない──そんな悩みを持つ人に代わって、日経DUALがご自身も子どもを持つ専門家に話を聞いてみます。前回はコンサートを運営する新日本フィルハーモニー事業部の企画・制作プロデューサーで双子の母親でもある桐原美砂さんにお話を聞きました(「親子で行くコンサートは子どもに残る貴重な体験」)。今回、日経DUALが訪ねたのはバイオリン奏者の塩澤菜美さん。新日本フィルハーモニー交響楽団の第1バイオリン奏者、そして3人の男の子の母親でもある塩澤さんに、塩澤家の音楽教育、そしてコンサートの楽しみ方を聞きました。

3兄弟、一人ずつ違った音楽の習い事

――塩澤さんは4月に中学2年生、小学6年生、そして1年生になる男の子のお母様だそうですが、ぜひ音楽教育について教えてください。やはり3人ともバイオリンを習っているのですか。

 実はそうではないんです(笑)。

 3人の子ども達には、それぞれが3歳になったとき、子ども用のバイオリンを持たせてみました。バイオリンなら私が教えられるかなと思って。

 長男はバイオリンを持つと、私が何か言う前に、自由に弾き始めました。私が「持ち方は・・・」と基本を教えようとすると「いいの、僕は弾きたいように弾くから」。これだけで私には教えられないと思いました。そこで音楽はピアノだけを習わせることにしました。ピアノは今も習っています。歴史も教えてくれるような先生なので、ピアノは楽しいみたいですね。そのおかげか、中学校では吹奏楽部に入り、今はトランペットを担当しています。

 次男はバイオリンを渡すと、すごくぎこちない持ち方をしたんです。私が見たこともないような持ち方。どうやったらそんなふうに持てるんだろうと思いながら、「じゃあ、縦にしてみたら」と言ってみたんですよ。そうしたらすごく自然に持つ。ああ、これはバイオリンよりチェロが向いているのかもしれないと思ったところ、本人もやりたいと言い出したので小2からチェロを習っています。

 三男は最初からバイオリンに興味を示して、素直に私の話を聞くことができました。持ち方もとても自然だった。彼にはバイオリンが向いていると思って、たまに私が見ています。

 兄弟なのに3人全員が違うから面白いですよね。

――どうしても子どもにもバイオリンを習わせる、とは思わなかったんですか。

 音楽に限らず、習い事に関しては、子ども達から「やりたい」と言われない限り、強制しないようにしています。やりたいことなら、親が強制しなくても自分一人でやり続けることができるだろうと思うんです。