企業が男性社員に求める働き方は、なぜ以前と同じなのか

 「ハルが熱だって。お迎え行けない?」(ママ)

 「ごめん、今見た。会議終わらない…」(パパ)

『大丈夫』の動画には、パパがまったく登場しません。子どもが熱を出したことをSNSで伝えても上記のような対応です。動画をご覧になった方は、「パパはどうした!」とじれったい思いをしたことでしょう。

 ただし、パパ不在という描写には、リアリティがあります。共働き世帯が増加しているのに、企業が男性社員に求める働き方は以前と同じです。男性の育児休業取得は進みませんし、長時間労働の問題も放置されています。また、部下の育児参加に理解のある上司、いわゆるイクボスはまだまだ少数派です。その意味でパパの前には、「働くしかない現実」が立ちはだかっていると言えます。

なぜパパは「お手伝い感覚」でしか家事育児をできないのか

「働くしかない現実」を目の前にしていても、パパが自力で改善できることがあります。それは「働いていればいいという意識」です。働いて収入を得ることで、家庭での役割は十分に果たしている。男性は無意識のうちにそうした考えを持ってしまいがちです。

 人気を博した『大丈夫』のスピンオフとして、今年1月に公開された男性を主役にした動画『パパにしかできないこと』には、「けっこう色々手伝ってるんだけどさぁ」という男性のセリフが出てきます。

サイボウズ ワークスタイルムービー『パパにしかできないこと』

 ですが、パパのこうした「お手伝い感覚」は、従来から家事・育児分担に関する議論の中で批判されてきました。「働いてさえいればいいという意識」だから、パパにとって家事・育児は「お手伝い」になってしまうのです。

 パパは働くママの大変さを理解するだけでは十分ではありません。パパがしなくてはならないのは、自分の「働いてさえいればいいという意識」としっかり向き合うことです。共働き世帯の新しいパパのあり方を形作り、家事・育児に対して当事者として自覚を持つ必要があります。パパの抱える困難である「働くしかない現実」を変えていくためにも、「働いてさえいればいいという意識」の見直しが求められています。