期待を抱いて引っ越した。しかし、「ここではとても子育てできない」と絶望

 引っ越しして、いざ保活開始。美容院や子ども支援センターなどでたびたび耳にしたのが「この辺の保育園でも2~3年待ちだよ!」という声でした。ここでも、0歳児で入園希望を出していた子が2歳、3歳になってやっと入れたという状況だということが分かったのです。実際に引っ越してきてみると、保活以前に、前情報では分からなかったことが次々と明らかになりました。

 子どもの数が少ないために、保育園の数がそもそも少ないこと。その割に認可園の入園を希望する待機児童が多いこと。自衛隊の基地が近く、飛行機の影が家の中まで走るほど低空飛行している。そしてその騒音でせっかく眠った子どもが起きてしまう。さらに、最寄り駅までの道が整備されていなかったこと。自家用車を持たない私達にとっては、とても幼い子どもと共に親子が安心して暮らせる環境とはいえませんでした。ここでの生活は5カ月で断念せざるを得ませんでした。

千葉県に越して5カ月で東京へ出戻り引っ越し

 少しでも夫の通勤に便利で、子育てがしやすそうな町に引っ越すことにしました。東京都足立区です。台東区で住んでいたときの部屋より少し広くて家賃も控えめ。

 足立区に移ってからは、もう保育園に入園申請するのをやめました。仕事を間断なく続けてきた私にとって、「子どもを保育園に入園させて働くことは、こんなにも難しいことなのだ」と、改めて考えさせられる機会になりました。ボロ雑巾のようになって働いてきた私に、「ゆっくり、マイペースに生きなよ」って言ってくれているタイミングなのかなと思えたんですよね。子どもが生まれたことで、「私の時間をもっと子どもと過ごすことに使いたい」と思うようになりました。人生観がこうも変わるものかと自分でも驚いています。

 「子どもと過ごす時間をまず一番に考えて、その合間で歌い続けることや、マイペースで続けられる仕事をやりたい」と思うようになりました。

 しかし、第二子を妊娠して「この身重では、遊びたい盛りの娘と思うように遊べない」。何気なく足立区のウェブサイトを見たら、通えそうな2つの保育園に1名ずつ空きがあるとの情報が上がっていました。在宅勤務ではありますが父の会社の役員になる予定だったこともあり、同年に企画主催した子ども歓迎ジャズライブの出演料、原稿料、妊娠もろもろすべてをひっくるめて8月に保育園の申請手続きをしましたが、ここでも残念ながら「待機」になってしまいました。

 しかし、10月下旬になって区役所から「急ですが、11月から保育園に入れることになりましたが通えますか?」という電話がありました。妊娠のおかげでポイントが上がったのだそうです。しかも、そこはたまたま一時保育で利用していた園でした。翌日には近所の小児科で健康診断を受け、入園許可が出て、翌月から3月まで通いました。おかげで妊娠中も産後も家族全員が心身共にとても助かりましたし、産後には保育料が割り引きになったこともありがたかったです。