脳を育てるには「非効率さ」が重要

(3)繰り返し練習し、復習する

 脳には新しい情報には瞬時に反応するという特性がある。そのためどうでもいい記憶や中途半端な記憶は新しい情報に書き換えられ、消されていく。しっかり記憶するには、情報を取り込む時点でA10神経群がプラスのレッテルを貼り、記憶を中途半端にしないためには「繰り返し復習する」ことが大事である。

 そして、考える力を高め思考を深めるには、繰り返し何度も考えることが必要。才能を伸ばすには、繰り返し復習し、繰り返し考える習慣をつくることが、非効率のように見えるが、実は鉄板のやり方。そもそも、育脳に効率を求めるのが間違い。子どもには「完璧を目指し復習する」「大事なことは繰り返し何度も考える」習慣を付けさせる。

(4)素直な性格を育む

 ただし、大人の言うことをそのまま聞くのが素直、という意味ではない。人間は何かを判断するとき、どうしても損得で判断してしまいがちだが、素直な心とは、損得抜きにして全力で頑張ることである。

 何かに取り組むときに損得を考えてしまう癖を付けさせると、「得をするから頑張る」「損をするから頑張らない」と、力の入れ具合を調整してしまう。素直に懸命にやる姿勢は、人の心も動かす。

(5)「だいたいわかった」などと中途半端な姿勢は持たせない

 例えば、走っているときに「もうすぐゴール」と思った時点でスピードは落ち、勉強していても「だいたいわかった」と思うと、思考力がガクンと落ちる。これは、「自分で決めたことは自分で達成したい」という脳の自己報酬神経群が満足し、思考力などの脳の機能を落としてしまうからだ。

 つまり物事がまだ完全に終わっていない状態で「だいたい」「もうすぐ」という考えを持ち込むのは、脳に「止まれ」と命令しているようなもの。子どもの頃から中途半端にしないという習慣を身に付けさせ、終盤に差しかかったときは「ここからが勝負」と捉えられるように仕向けることが、育脳の大事なポイントになる。

(6)人の話をワクワクして聞く

 A10神経群には感情を司る「尾状核」があり、感情が揺り動かされると判断力や理解力が高まる。そのため、子どもと接するときは「何か面白いことが起きるかもしれない」「次はどうなっていくんだろう」とワクワクさせ、期待させることも必要。

 また、子どもと話すときはたとえ知っていても「すごいね」「面白いね」と語りかけ、感動する力を育んでいく。