幼児教育に適した「年齢」とは?

 これらの点を踏まえて、ヤマハの有効性を見ていこう。まずは4〜5歳という年齢についてだが、「この年齢から始めるのが子供の成長には最適」と林氏は太鼓判を押す。

4歳から音感教育を始めるのは、脳科学から見てもジャストタイミング。ヤマハは『耳を鍛える』と言っているそうですが、それは正確に言えば、耳ではなく脳を鍛えることなんです。聴覚は人間の五感のなかでは最も先に発達します。まだ目が見えない赤ちゃんでも、お母さんの声は聞いている。だから幼児の時期に耳を通じて脳を鍛えるのはいい方法だと思います」(林氏)

「最近は早期教育ブームで0歳から学習能力を高める塾などもありますが、ほとんど意味がない。なぜなら、赤ちゃんから3歳までは脳細胞が増え続ける時期なので、未熟な脳に負担をかける知識の詰め込みは良くないし、3、4歳ぐらいから脳細胞の間引き現象が起きるので学習効果がない。その一方、4歳から7歳ぐらいまではいらない脳細胞が減り、反対に生き残った細胞で神経回路が組み込まれるので、この時期に五感からどんな情報が脳に伝達されたかで脳の回路の大枠が決まる。そして7歳から10歳ぐらいの間に組み込まれた神経回路が発達するので、学習効果が高まります」(同)

 林氏は、4、5歳の幼児期で音感を磨き、6、7歳の児童期から実際にピアノなどの楽器を弾かせ、学習項目を増やしていくのは、脳の発達に適したプログラムになっていると言う。

親の疑念が、子どもの学習能力を落とす

 ただ一方で、親からしてみると、ヤマハに通わせてもなかなか演奏が上達しないように見える。実際に「なぜピアノ教室に通っている他の子より、進み具合が遅いのか」という苦情も多いのだとか。

 ヤマハの音楽教育メソッドを理解するには、親がある程度子供の脳の仕組みを知っていないと、どこかで「本当にこれでいいのか」という疑問や不安が生じる。親が少しでもヤマハ音楽教室に疑念の表情を見せれば、子供にも敏感に伝わる。その時点で、子供の学習能力がガクンと落ちると林氏は言う。

「少し専門的な説明になりますが、脳内のA10神経群で、面白い、好きだ、楽しい、といったプラスの感情を持たないと、大脳皮質で考えることが難しくなり、理解力や記憶力がしっかり働かなくなります。つまりヤマハの教育システムなり講師なりに親や子が“同期発火”を起こさないと、教室に通ってもそれほど能力が伸びません」(林氏)

 同期発火とは相手に同調する脳の仕組みをいう。

「例えば、嫌いな教科よりは好きな教科の方が学習能力は高まるし、嫌いな先生の授業は耳に入らないけれども、好きな先生の話は懸命に聞こうとする。その脳の動きを同期発火といいます」(同)