甘え上手は子育て上手

——子どもができて仕事の幅も広がったのでは?

 長男を産んだ後、縁あってNHK教育テレビの子育て番組の司会の仕事を頂きました。そのころ、長男も生後10カ月。番組で知ったノウハウをそのまま自分の子育てに生かしていました。長男は番組に育ててもらったようなものです。

 その番組で心に残ったのが、「カードをたくさん持つべき」という言葉。行政や自分の周囲に頼れるところをたくさん作って、頼れるときはとことん頼ってしまう。「甘え上手は子育て上手」ということを番組で学びました。

——周囲に上手に頼ることができるようになったんですね。

 働くお母さんは、周りに頼って働くことに罪悪感を覚えることもあるかと思います。でも、助けてもらった皆さんへの感謝の気持ちを持ちながらも、堂々と働いてほしいと思っています。

 自分で体験してみて初めて知りましたが、子育ては本当に大変。専業主婦でも時にはリフレッシュの時間をもらい、好きなことに没頭することも必要だと思います。

 子育ては密室での孤独な作業です。長男が生まれた当初は、私は一人で頑張ろうとし過ぎました。いろんな人と助け合って、心の空気を入れ替えなければいけないんですね。

——湘南に引っ越したことも気持ちの上で良かったようですね。

 私は都内で生まれ育ち、長男が生まれるまでは目黒通り沿いのマンションに住んでいたのですが、子育てに向かない所でした。騒音がひどく、窓も開けられない。子どもが生まれるまでは気づきもしなかったことです。

 湘南に越して思ったのが、空が広い! 人と人との垣根が低い! ということ。引っ越し当日、ベッドが部屋に入らなくて困っていたら、マンション中の住人が出てきて手伝ってくれて、そのまま夜は宴会になりました。

 今でも「遠くの親戚より近くの友人」ということを実感しています。ママ同士が仲良くなることで子どもを見守る体制ができ、防犯上も良いことだと思います。ここでは、子どもは地域みんなで育てていくという感じです。

——今日(取材当日)はお子さんをどこに預けているのですか?

 母に見てもらっています。母は長年続けた中華料理店を閉め、時間ができたので、どんどん甘えさせてもらおうと思っています。

 ママ友にも私をもっと頼ってほしい(笑)。長男の友達が遊びに来ることがあるのですが、そういうときは子どもだけで遊んでいるので逆に楽になったりします。頼り頼られが理想ですね。

子どもが生まれて多くの発見があったという奥山さん。後編(「ダウン症の次男、母になれたと思った瞬間」)では、第二子がダウン症と診断されてからのお話を伺います。

(文/福村美由紀 写真/吉村永)

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『生きてるだけで100点満点!』
奥山 佳恵著/ワニブックス
明るいキャラクターで人気の女優、奥山佳恵によるノンフィクション。第二子・美良生くんの障がいに傷つき、悲しみ、受け入れ、そして案外普通に暮らすまでを飾らず正直な文体で描いている。自身によるイラストも多数掲載。

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