奥田 新入社員として仕事をスタートしたときに座っていたのは、みんな座り心地の悪い粗末な木の椅子というイメージです。それが仕事を続けていくに従って、快適なオフィスチェアに変わっていく。子どもを産んで職場に復帰してみると、そのオフィスチェアがどうも具合が悪い。それは当たり前のことです。以前は1人で座っていた椅子に、もう1人背負って重くなった状態で座るわけですから。その座り心地の悪さを、2、3年はそのまま過ごせばいいと割り切れるなら、何も会社を辞める必要はない。自分は一度会社を辞めて、次の会社でもう一度木の椅子からスタートしてでも、自分にとって一番座り心地のいい椅子を求めていくという強い思いがあるなら、それも一つの選択です。
ただ、私自身が仕事を始めてからこの25年の間に、社会は大きく変化しました。今も急激に変化し続けています。社内で、女性が男性と同じ会議の席に着き、対等に議論しているなんて今では当たり前ですが、25年前には考えられなかった。これから、会社で女性が仕事を続けていくための環境がもっと整ってくるはずです。誤解してほしくないのは、「だから今のワーキングマザーは恵まれている」と言うつもりはなくて、これだけ時代を変えていける可能性がある世の中に私もあなたも今いるなら、ただ変わるのを待つのではなく、変えていく側にいたいし、いてほしいと思います。
(取材・文/成田真理 写真/竹井俊晴 構成/梶塚美帆)