夢を捨てて子どもや夫のせいにしないために
羽生祥子日経DUAL編集長 今から50年以上も前の日本で、「働くママ」として生き抜いてきた小林さんは、尊敬すべき先駆的存在です。子育て環境もメンタリティーも大きく違う現在ですが、同じ母親同士として、子育て真っ最中のDUAL世代にアドバイスを頂けませんか?
小林照子さん(以下、敬称略) 子育ての渦中にある人は、「この大変さが永遠に続く」と思ってしまいがちかもしれませんね。でも、大変な時期には必ず終わりがある。子ども達は、いつかは親から他のものへと関心を移していく。それが成長というものです。そうなっていく前に母親を強く求める時期もありますが、それは成長の過程であって、ずっと続くわけではないのです。
それに気が付かずに親が自分の夢を捨ててしまうと、後になって後悔することになります。「あなたが家にいてほしいというから、お母さんは夢を諦めたのよ」と子どもに言い、「あなたが両立は無理だというから、仕事を辞めたのに」と夫に言うことになる。辞めた後になって、「仕事ってこんなにすてきだった。楽しかった」って実感したとしても、かつてのポジションには戻れないでしょ? だから、仕事は簡単に手放しちゃいけない。
どうしても仕事のパイプを細くしなくてはいけない時期はあるけれど、とにかく「自分」というものをおなかに持ち続けていることが大事です。夢や目標を実現するには、自己責任の覚悟を持つことが必要だから。
完璧を追求せず、自分なりの判断基準を持つといい
小林 では、「どうやって仕事と育児を両立するか?」。それは、自分なりの基準を持てばいいのではないかしら。私の場合、極端にいえば、「死ぬか死なないか」、それを判断基準にしていました。部屋が散らかっていても、死なない。洗濯物を干してなくても、死なない。でもごはんを食べさせないと… いけない、死んじゃうわ。だから食べさせなくちゃ……! 本当に忙しいとき、働くママが大変なときは、それくらい極端な判断基準でもいいかと思います。
いつもは仕事に力を注いでいても、今これをしないと命に関わるというときは、何が何でも育児を優先する。
私と同世代の女性には、自分を犠牲にした人がいっぱいいるんですよ。仕事を諦めた人もいれば、仕事でも家庭でも完璧にやろうとして無理がたたったのか、夫と3人の子どもを残して命を落としてしまった人もいる。
そんなこともあり、私自身は「やらなくても死なない」ことは徹底して外していきました。全自動洗濯機、電子レンジなど、家事を合理化してくれる家電にも、出費を惜しみませんでした。