きれいになると気持ちもポジティブになる

―― 子どもを育てつつ仕事をする、という立場だったからこそ、数々の「世界初」を生み出すことができたというわけですね。

小林 そうですね。美容液は確かに、世界初です。当時は「美容液」という名称では厚生省の認可が下りず、「化粧液」として売り出しました。翌年、資生堂とカネボウという二大大手が類似製品を出したことで、役所も「美容液」と名乗ることにOKを出してくれました。

―― 保湿成分を高めたというのがポイントですか。

小林 皮膚で感じる満足感と美容効果って、一致しているんですよ。皮膚が「これはいい、これすてき」と思うものが正しいというのが、私の持論です。皮膚の感じる力が強いことは、第1回(「小林照子 人はみんな違っていていい」参照)でお話しした通り、母の寂しい気持ちをおんぶされて肌で感じていたときから分かっていたように思います。

 私自身、はいずり回っていたかと思うと、「皆さん、ごきげんよう!」というキラキラな世界に行かなくてはいけない。実際は疲れ切っているのに、ぱっと見たときに「きれい!」と思ってもらわなくちゃいけないわけです。しかも毎日、子どもの預け先を探すのに右往左往し、毎朝、電話がかかってくるたびに、ビクビクする。「『今日は預かれないの』というシッターさんからの電話だったらどうしよう。電話がかかってくる前に早く預けに行こう」と必死。そんな綱渡り状態でやっているときに、開発したのが「これをつけるだけで一気にきれいになる!」という美容液。きれいになると人は気持ちもポジティブになりますからね。

陰で“ヒッピーばばあ”と呼ばれていた

―― そうしたワーキングマザーとしてのリアルな日常から、発想された美容液ですが、周囲の反応はいかがでしたか。

小林 たった一人から始まった美容研究室も、いつの間にかスタッフが増え、社内ベンチャーのような存在になっていました。私は研究員といっても白衣なんか着ないし、押し付けの制服はもちろん拒否。海外で買ってきた奇抜なデザインの服など、自由にファッションを楽しんでいたから、陰で“ヒッピーばばあ”と呼ばれていました(笑)。