店も客も会社も私も喜ぶウィンウィンの関係

小林 そうするうちに、お客様から「小林さんのメークのおかげで結婚できた」「しゅうとめとの仲が戻った」なんていう話を聞くようになりました。メークがきっかけになって“ミス山口”に選ばれた人もいます。私がメークをした人がきれいになって、どんどん幸せになっていく。だから私は“ハッピーメイク”と呼ぶようになったんです

 いかにもメークしましたって感じだと「どうしたの?」ってことになるけれど、ナチュラルメークだから「あなた、いつの間にそんなにきれいになったの?」と周囲から羨ましがられるわけです。「あそこの店に行ったら、きれいになった」ということで、店もはやることになりました。当時は意識していなかったけれど、ウィンウィンの関係になっていたのね。お店も、お客様も、会社も、私も喜ぶっていう

 私は演劇の世界に行きたかったので、うんと若く見えるとか、美しいとか、気品があるとか、いろんな顔を作ってみたいわけです。だからお客様それぞれの個性を見つけ、それを生かすメークを考えます。同じお客様でも毎回テーマを変えるのでメークも変わります。だから、何回も来てくれて、その都度喜んでくれる。お友達を連れてきたりして、100人になる。私もメークの理論を組み立てることができて、演劇の世界に近づいている気がしてうれしいわけです。

売り上げが注目され、本社に呼び戻される

―― 強い情熱を持って25歳まで山口を回り、その後、東京の本社に戻られたのですよね?

小林 私は教育部門で採用されました。山口を担当して2年が経ち、販売話法を教える先生として本社に呼び戻されたんです。でも販売話法の技術なんて全然無いんですよ、あるわけない(笑)。

 商品を特別な持ち方で手に持って見せたら高級に見えるとか、ある成分がいかに効果的かを説明するとか、それが販売話法として教育されていた中で、山口での2年間は、そんなの完全に無視してひたすら実践を積み、結果として売り上げが伸びていただけなのですから。